今回は私の愛読誌『致知』から、高校の吹奏楽部の先生のお話です。
たった5人しかいなかった吹奏楽部を、全国大会に19回出場させて、金賞獲得10回、全日本マーチングコンテスト出場全16回すべて金賞、世界マーチングバンド大会でもワールドチャンピオン2回等々にまで育て上げた藤重佳久先生の話です。
藤重先生は指導にあたって、どういう生徒に育てたいかというビジョンが大切で、吹奏楽で言えば音楽がよくなるだけではダメで、技術よりも人間教育がやっぱり基本だと言われます。
全国の強豪校を回って練習を見学すると、強豪校は音楽教育というよりは人間教育、つまり技術よりも挨拶や整理整頓、話し方、歩き方、表情ということに重きを置いていたことに気付きました。
挨拶や整理整頓と音楽の技術との間には一見すると相関関係はなさそうですが、あにはからんや。
天才数学者の藤原正彦さんが、数学という論理的学問であっても、新しい解法を模索する際、最終的に頼るべきものは母国語のもたらす感覚や情緒だと言われることにも共通しています。
藤重先生は、強豪校の見よう見まねで、音楽の技術以外にいろいろな取り組みを始めました。
例えば日誌です。毎日練習後に良かった点や反省点、気付いたことを書かせたのです。これが生徒を育てる大きなツールになったといいます。
不思議なことに楽器が下手な生徒は字が汚く、漢字が間違っていたり、紙が折り曲がっていたりで、とにかく雑だといいます。
これは大阪の松虫中学陸上部を7年間で13回日本一に導いたカリスマ体育教師の原田隆史先生の指導方法「原田メソッド」にも通じるものがあります。
学校教育であろうと、会社経営であろうと、知識や技術だけ磨いても一流にはなれないということですね。やり方半分、そしてあり方が半分ということでしょうか。