今回は、非常にデリケートなテーマです。厚生労働省によると、ウツ病など気分障害の患者数は、1996年に43万人だったものが、2008年には104万に増加しているそうです。この急激な増加の原因はいったい何なのでしょうか。
もしかして、以前はウツと診断されていなかった症状までウツと診断されているということはないでしょうか。病院も患者も、ウツの方が都合のいい人たちが増えているということはないでしょうか。
困ってしまうのが、一見「怠け」にしか見えない職場ウツというものです。会社には行けないけど、遊びには行ける。仕事はできないけど、ゲームをやっているときは楽しい。これが病気だとしたら、どう対処したらいいのでしょうか。
ウツの原因を、働き過ぎやストレスだと言う人もいます。たしかにそれも原因のひとつかもしれません。しかし、30年前の人も現代人と同様、よく働いていました。むしろモーレツ社員という言葉があったように、昔の方が働いていた気がします。
ストレスについては、医者が病気の原因を何でもかんでもストレスだと言うのを聞くと、少し違和感を覚えます。ストレスの一言で、さも究明できたように診断してしまう医者を疑ってしまいます。それでは、ゴルフのミスショットの原因を、「ヘッドアップ」としか言えない素人ゴルファーと変わりません。
しかし思い起こしてみれば、昔のサラリーマンは適当に息抜きができたものです。会社を一歩出たら、上司の目など届きません。30年前には携帯電話もポケベルもなかったのです。仕事で急用があってもなかなか連絡が取れないのが普通でした。それでも困ることはありませんでした。
平成になり、ポケベルが普及してからサラリーマンの行動管理が厳しくなりました。その後さらに、携帯電話やメールが普及してからはサラリーマンにとっては最悪です。
便利にはなりましたが、一方で着信履歴や受信メールへの対応が遅れてしまうと、クレームの対象になることさえあります。ビジネスマナーは変わってしまいました。
もちろん、すぐに対応すると相手の方は喜ばれますし、名刺交換してすぐに手書きのハガキでも書くと感心されます。しかし、みんなでこれをやっていたら差別化にもならないし、人によっては精神的におかしくなってしまいます。
急な来客や電話、多くの報告や会議、無意味な接待……こんな重要性は低いが急ぎ、というような要件に振り回されたくないものです。勉強や健康など自分に対する投資、準備や計画、人間関係作り……緊急性は低いが重要なことに時間を使えるようでしたら、ウツは減ると思うのですが。