結果責任と実施責任

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 社員みんなで自由に意見を言い合える風通しのいい会社をどう思いますか。仲良く合議制で運営されるなんて、理想的な気がしてきますね。

 しかしここで、勘違いしてほしくありません。社員の合議で決めていいのは、会社の方向性でなく現場におけるやり方などの実施面についてなのです。

 中小企業において、会社の方向性は社長が示していくしかありません。そこで社員に意見を求める必要性も意味も全くありません。時に経営者は社内事情も無視した決定を下さなければならないこともあるのです。そんな決定に社員の意見を取り入れるわけにはいきません。

 そして社長が決めた方向性や計画値についていい結果が出なかったとしても、その責任を社員に負わせてはなりません。結果や利益に対する責任はすべて社長が負うのです。

 社員が責任を問われるべきは結果ではありません。それは決められたことを決められた通りに実施しなかったときです。つまり実施責任は問われても、結果責任は問われないのが社員なのです。

 時々、「赤字の原因は社員がダメだから」と言う社長がいます。そこまでは言わないにしても、自社のダメ社員のダメ行動を他人の前であげつらう社長には結構出会います。情けない限りです。そんな社員を採用したのも、教育したのも社長自身ではないですか。

 「自由に意見を言い合える会社」、それは私自身も目指したいところです。ただしそれは経営者が示した方向性のなかにおいて、自由闊達に意見を出し合えるということです。何の制限もなく社員の思いや理想に任せて運営したら、会社はあっという間に潰れてしまうのです。

 「事業経営は社長のワンマン決定こそ正しい姿勢であり、合議制は社長の責任逃れを美化したものだ」……経営コンサル故一倉定氏