性善説or性悪説

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 どんなに儲かっている会社でも、社内に調和がない会社には危うさを感じてしまいます。社長が社員を人としてどのように見ているかは、社長自身の将来にとって本当に大切なことだと思っています。社員をいい思い込みで見るのとよくない思い込みで見るのとでは、会社の業績も違ってくるのではないでしょうか。

 50年以上前にアメリカの経営学者マグレガーが唱えた「X理論Y理論」は有名ですが、そこでは人に対する見方には二通りあると示しています。

 X理論(性悪説)……人間は本来的に怠け者で責任を取りたがらず、放っておくと働きたがらない。組織の目標達成のためには、強制や統制、命令が必要である。

 Y理論(性善説)……人間は本来的には向上心があり、条件次第で目的に対して積極的に働く。達成感や自己実現といった目に見えない報酬に導かれて献身的に貢献するものだ。

 これは、あなた自身がどちらのタイプなのかということではありません。人の働き方に対する二つの見解です。この経営者の人間観が企業運営のあり方に大きな影響を及ぼすのです。

 X理論のマネジメントスタイルでは、モチベーションのためには懲罰を持って脅かすか賃金を上げることを約束することが必要になります。欲求水準の低い社員には有効かもしれません。

 一方、Y理論のマネジメントスタイルでは、個人の欲求や目標が企業業績につながります。成熟社会の社員は高い欲求水準を持っていますから、生活のために働く社員は少ないものです。したがって社員の自主性を尊重した経営が有効です。社員の欲求が「認められたい」、「自己実現したい」という高次のものである場合、賃金や命令は効き目がないのです。

 欲求5段階説を唱えたマズローもこのY理論による人間観を支持し、「経営者たちに、これこそが経済的な成功へ至る道であることを強調したい。社員をもっぱらY理論的な人間として扱うことが賢明だ」と言っています。

 経営者が、社員をどう捉えるのかによって企業の性格が決まります。また社員は経営者の考える人間観の通りになるのです。
もちろんXとYは、白黒はっきりできるようなものではなく中間的な考えもあります。社員としては、出来ることならY理論的な人間観を持った上司の下で働ける方がいいではありませんか。