企業にとって『人』の問題は永遠のテーマです。私はいまだかつて、人について悩みを持っていない経営者にはお会いしたことがありません。採用からはじまって、躾、教育、モチベーション、退職……どの段階においても頭を悩ますことばかりです。
中小企業には完全なる採用ノウハウなどありません。ましてや有能な人材の多くは大企業指向が強いものです。しばしば、中小企業には可能性や将来性があると言われますが、可能性も将来性もない会社が多いのもまた中小企業なのです。私自身もそうでしたから、若者の多くが大企業を目指す気持ちはよく理解しています。
したがって、中小企業に入社してくる社員のだれもが会社にとっていい人材になるかというとそうはいきません。出来ることなら、一度採用した人を解雇して欲しくはありませんが、採用したからには何がなんでも雇い続けなければと考える必要もありません。それは会社のためだけではなくその社員のためでもあるのですから。
もちろん、ダメ社員に辞めてもらうことで簡単に問題が解決するわけではありません。出来の悪い社員が辞めて優秀な社員ばかりで固めたとしても、その優秀な社員の中からまた出来の悪い社員が出てきてしまうのが現実なのです。4番バッターだけ集めてもチームは機能しないのです。
一般に、業績のいい会社の社員は定着率が高いように思われがちなのですが、意外なことに、いい会社を調べると離職率が高いという結果があると知人のコンサルに聞きました。よく考えてみると、いい会社は一人当たりの生産性が高い分、各社員にはそれ相応の高いレベルが求められます。その厳しさに負けてしまう社員も当然出てくるのです。
社員が会社を辞めていく理由はいろいろありますが、給料が安くて辞めていった人を私は知りません。一方、給料が高くても退職していく人もいます。年俸2000万円以上の報酬を受け取りながら退職した人もいます。
最近の大石会計の退職者の傾向を見ますと、週一回の朝の商店街ゴミ拾いに参加しない人が高確率で辞めてしまうようです。ゴミ拾いは、元々は社員たちが始めた自主活動なのですが、今となっては会社の主要活動のひとつになっています。
理由はともかく、その活動に賛同しない人はなぜか辞めてしまうのです。会社の文化に合わないのですから当然と言えば当然なのですが、結果としてこれが会社と社員の志向の違いを明確にしてしまうリトマス試験紙になっているようです。あなたの会社にはどんなリトマス試験紙があるでしょうか。