事業は一度始めたら、途中でやめることは簡単ではありません。上手にやめられる人は幸せなもので、一家離散または夜逃げ同然で一生を台無しにしてしまう人もいるのですから事業をするには覚悟が必要です。
いまから20年前までは経済の成長とともに物価は上がり続けるのが資本主義の歴史でした。しかし、その後の20年は物価が下がることも当たり前になりました。経済に国境がなくなった現在では後発国の物価に影響を受けるようになったこともその要因のひとつです。
30年前の学生時代にニューヨークに行ったとき、エンパイアステートビルで買った置物を帰国してから見たら、裏に’Made in Japan’と書かれてあり驚いたものです。いまでは日本の観光地のお土産ものは中国製やベトナム製ばかりです。変わった日本の立場に喜ぶべきか悲しむべきか……。
かつての日本と同じように、技術移転が進み国内産と同じものが途上国でも簡単に作れるようになってきました。液晶テレビやプラズマテレビが日本のお家芸と言っていたのは数年前のことで、いまでは海外生産の方がはるかに多いのです。国内で中国やベトナムと同じものをつくっていたのではとても勝ち目がありません。
高い技術力や企画力で海外に勝てないのであれば、製造の拠点をより人件費の低い地域または国へ移転し、変動比率を下げるようにしなければ競争には勝てないのです。
国内の製造業が成り立つためにはより低い製造コストで戦うしかありません。人件費というコストでは中国やベトナムには勝てませんが、人の手を介さないロボットでしたら中国とでも戦うことができるのです。ロボット導入のコストは世界中変わらないのですから。
交通や通信網の発達により、国境という概念が希薄になり、誰でも自由にあちこちの国に行けるようになり、また情報を取得できるようになりました。そう遠くない将来、企業も人もマーケットとなる国や税金の安い国に集中するようになる筈です。
いっそのことデフレが一気に進み、人件費や土地を含めた物価が3分の1になったら価格競争力が高まり、再びアジア諸国と対等に戦うことができると思うのですが。