中小企業の大きな問題点の一つに人材の乏しさということがあります。企業人事にとって最も大切なことは、適切な人材の採用なのです。経営者は、企業経営はすべてここから始まると心得るべきです。
どんなに能力があったとしても、どんなに人柄が良かったとしても、会社にとって適切な人物かどうかとは話が別です。人格能力ともに合わせ持っている友人でも、仕事となると一緒にやりたくない人もいるのではないでしょうか。
会社にとって適切ではない人たちから、適切な行動を引き出すことはできません。まず、適切な人を船に乗せて、そうではない人を船に乗せないことが大切なのです。採用時の判断を誤って適切ではない人が船に乗ってしまったと気付いたら、早目に下りてもらうのがいいのです。
では、どんな人が適切ではないのでしょうか。適切な人でしたら、方向性を与えたフィールドで放っておいても会社にとって有用な行動をとれるはずですから、その人物の管理をする必要はありません。もし管理が必要と感じたならば、採用時の判断できっと間違いを犯しているのです。
この頃では、人材は宝だと言って「人財」と表す人がいますが、企業にとってすべての人材が最重要の資産ではありません。適切な人材こそが最重要の資産なのです。
ソニーは採用時に学歴を不問にしています。リクルートは一人の学生に対して1対1の面接を10回近くも繰り返すといいます。どちらも成長可能性を重視した選考を行っているのです。重視するのは性格等の数値で計ることが困難な資質なのです。
採用にあたって具体的な知識やスキルはどうでもいいと言っている訳ではありません。ただ、これらは教育もできますし、少なくとも学習することが出来るものです。しかし性格や価値観、職業観、熱意、基礎的知識等は簡単に変えることはできないのです。そんな変えることのできないものを変えようとして、大きなパワーを使うのは会社にとって大きなロスです。
世間で優れていると言われる企業は職場としてみたら、厳しいところばかりです。誰にとっても夢のようなパラダイスなどないのです。ただし、これらの文化は厳格であっても冷酷ではありませんから、業績が悪くなったからと簡単にクビを切るようでは困りものです。
しかし、いずれ船を下りてもらうと分かっているにもかかわらず、その相手にいつまでも席を与え続けているようでは、相手にとっても無駄な時間を過ごさせるだけです。それは相手を気遣っているのではなくて、結局はその方が自分にとって楽なだけなのです。
下船させるべきか判断がつきかねるときは、今面接をしたとしてもう一度その社員を採用するだろうか、あるいはその社員から退職の申し出があったとしたら、深い失望を感じるだろうかと考えてみてはいかがでしょうか。