政府は有給休暇の取得率を現在の40%台から70%にまで引き上げるとの目標案を決めたようです。2020年までの目標値ではありますが、個人的にはお国が働かないことを奨励するのもいかがなものかと思います。国民に一所懸命に働きなさいというのでしたらともかく、景気回復に水を差しかねない政府の方針にはおおいに違和感を覚えてしまいます。
単純に考えても、有給の取得日数を5日増やせばそれを埋め合わせるために会社は2%の人員増が必要になります。これはとりもなおさず2%の人件費アップを意味するのです。疲れきっている企業にとっては、国際競争力が落ちるどころか存亡にかかわる問題となりかねません。
また子ども手当と同様に、耳に心地いい政策を打ち出して参院選挙に臨もうというのでしょうが、やっていることは旧社会党が政権をとったのかと思えるような政策ばかりで、これでは景気が良くなるとは到底思えません。消費不足の原因は休暇が足りないことではないのです。
政府はかつて「年1800時間労働」や「ゆとり教育」を打ち出して、結果としてそれでどれだけ国民を豊かに出来たでしょうか。国を挙げて、休みなさい、お金を使いなさいと奨励しているようでは労働組合より始末が悪いといえます。自分の子どもにそんな教育をする親がどこにいるでしょうか。
多くの国民が経営者から虐げられ搾取されているという社会問題があるのならともかく、国は民間の働き方にまで余計な口出しをしないでもらいたいものです。状況によってはワークシェアリングを行うなどして雇用は維持したいものですが、このご時世の中でただ単に休みを増やせでは気のきいた提案とは思えません。
もちろん、有給休暇は労働者の権利ですから、取得率を上げることは結構なことです。しかし多くの方にお叱りを受けることを覚悟で言わせてもらうと、ただでさえ社会保険料の負担が毎年増え労働分配率が高くなっているところへ休みを増やしたのでは、中小企業は人件費倒れとなります。どうせ奨励するなら、生産性を上げられる何かを奨励してほしいものです。
褒めて育てるといいますが、実際に褒められて育つ人はあまりいません。心に響いてわたしたちの人生を変えるものは甘い言葉や優しい言葉ではなく厳しく耳障りな言葉であることのほうが多いものです。
経営者や上司たるもの、部下から好かれようなどとは思わずに優しさ2割、厳しさ8割の態度で接してはいかがでしょうか。相手を思えばこその厳しい振る舞いは簡単ではありませんが、結果としてその方が相手の人生にいい影響を与えられるはずです。