あなたは、自分ひとりしかいないときに、道で倒れている人を見かけたらどうしますか。普通でしたら瞬時に手助けして救急車の手配をするのではないでしょうか。躊躇したり迷ったりしている場合ではありません。それではもし、混み合っている夕方の駅前で人が倒れていたらどうでしょうか。案外周りの人の様子をうかがってしまう気がしませんか。
こんな現象を心理学では「社会的手抜き(リンゲルマン効果)」と呼びます。集団への参加人数が増えるほどに「自分がやらなくてもほかの人がやるのでは」と、個人の責任感が薄れ手抜きをしてしまうというものです。
一人でする作業は成功も失敗もすべてが自分ひとりの能力と努力とにかかってきます。成功すれば栄光は自分のものだし、失敗すれば責任は自分が負うことになります。ところが何人か集まり集団になると急に頑張ることをやめてしまというものです。集団のサイズが大きくなるほどこの手抜きは大きくなりますから、企業経営でもこの点に注意が必要です。
社内打ち合わせで、わたしと1対1のときの社員はとてもいい目をしながら積極的に事務所のことを考えた発言やアイデアを出してくれます。本当にいい社員に支えられていると実感する瞬間でもあります。
しかし、打ち合わせでの人数が増えるに従って、熱さも積極性も薄れてしまうと思える場面は、残念ですが大石会計内でもよく見受けられます。ものごとを考えるのに一人で考えるよりも集団で考えたほうが創造的な発想ができると思いがちですが、実際はそうではないのです。
このように、なにかを決める会議では人数を絞り込んだ方が効果は上がります。参加者意識を高めるには構成メンバーは少ないほどよく、中小企業の場合は本当に大切なことは社長一人で決定するぐらいでもいいのです。
そして決定されたことを部下に伝えるときにも「みんなで力を合わせてやってくれ」といった指示の仕方はよくありません。結局誰もやらないという事態が起こりがちです。具体的に誰と言われていないので誰かがやってくれるだろうという心理が働いてしまうからです。
会議で発言が出ないことだけではなく、決められたことが実行されない、電話に出るタイミングが遅い、トイレが汚れてしまう等々、これらはすべて社会的手抜き現象なのです。これを避けるためには、グループサイズを大きくし過ぎず、担当者とその責任を明確にして指示を出すことです。