夏休みを利用して息子とふたりで山口県の萩に行ってきました。やはり印象に残ったのは松下村塾でした。幕末の志士たちを輩出した小さなこの私塾に息子が何を感じたのかは聞いていませんが、わたしにとっては自分たちのやっていることをもう一度考え直すいい機会になった旅でした。
中小企業経営者がいつでも抱えているテーマのひとつは社員の動機づけです。吉田松陰のように若者たちを動機づけることは容易なことではありません。いったいどんな時に社員の心に火がつくのでしょうか。
我が身を振り返ると、人から指図されたり誘導されたりすることでモチベーションが高まったことは一度としてありません。親から勉強するよう小言を言われた時など最悪です。誰かに導かれつつも最後は自分で決定したときにだけやる気になり、そして持続してこられたものでした。
自分でやりたいと思って始めたことでしたら、勉強でもスポーツでも仕事でも少々の苦しさは乗り越えられます。インセンティブ(ご褒美)があるからやるのではなくて、やることそのものが面白いからやるのです。
大石会計事務所では2年前から社員が毎週水曜日に駅前商店街の清掃をしています。あるとき、社員同士で飲んだ席で盛り上がって始めたようです。事務所としてはありがたいことなのですが、これは社員たちが勝手に始めた自主活動であり、仕事とは関係ありません。
もしもこの清掃に、1回参加したら1,000円貰えるというインセンティブがあったとしたらどうでしょうか。きっとモチベーションが上がるどころか、反対に不参加者が増えるように思います。社員たちは小さな社会貢献活動そのものに満足感を覚えているのでしょうから。多少でも対価がある早朝ゴミ拾いでしたら、反対に1,000円払ってでも他人に代わってもらいたいと思う人はいるはずです。
面白くもない単純作業や力仕事は適切なインセンティブを与えることで生産性が上がります。しかし、仕事そのものに意義を感じることができるのならば、インセンティブは不要になります。そういった場合のインセンティブや成果主義は、かえって成果の低下をもたらしてしまうという調査結果もあるくらいです。
単純作業、単純知的労働、力仕事、これらは外国やコンピュータ、機械にどんどんとって代わられています。それに伴い、いまわたしたちの周りにある仕事は、かつてよりも複雑化し面白味が増しているのではないでしょうか。ゲーム感覚になっているものも少なくないように思えます。
それなのに、わたしたちの意識の中ではいまでも、仕事はつらいもの、楽しくないもの、させられるものといった思い込みがあるように思えます。仕事も変わってきているのですから、わたしたちの意識も変えなくてはいけません。