自分はやらない

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 営業力に多少自信のある人が起業すると、自分ひとりで年商1〜2億円くらいのビジネスは簡単に出来てしまいます。社長の持つノウハウや暗黙知は社員に伝えるより自身で実践した方が簡単に成果を出せるので、営業マンは社内に社長だけという中小企業は少なくありません。

 しかし社員が10人を超え年商4〜5億円になると社長だけの営業力ではなかなか通用しなくなります。機能しなくなるというのが実際のところではないでしょうか。この規模になると社長がお客様に直接接する機会は減ってしまいます。社長の体はひとつしかないのですからそれも仕方がありません。

 どうしても自分がお客様と直接接しなくては気が済まないという社長はそこまでにして、それ以上の規模の拡大は望まないことです。社長の目の届く範囲での納得のいく手厚いサービスを提供するのがいいのではないでしょうか。

 会社経営においては、社長が何でも出来ること、やってしまうことがいいとは限りません。なまじ出来るから人に任せられないというマイナス面が出てしまうからです。人は任せられないと成長しませんし、なにより限られた時間を有効に使うためには任せてしまうしかありません。

 料理を作れなくてもレストラン経営はできるのです。JALの社長に就任した稲盛和夫さんが旅客機を操縦できるという話は聞いたことがありません。

 自分に出来ないこと、苦手なこと、手が回らないことは人に任せてしまうのがいいのです。営業が苦手なら営業の得意な人にお願いすればいいのです。PCが苦手ならPCの得意な人に、経理が苦手なら経理の得意な人に任せてしまうのです。全部自分でなんて出来ないのですから。

 ただ、人に任せることには勇気がいります。当たり前ですが、任せた結果上手くいかないことも少なくありません。しかし、それを我慢するのも社長の仕事なのです。お客さまに迷惑がかからない範囲内では我慢するしかありません。それは自分との戦いでもあるのです。

 経営とは極論すると判断することです。作業をすることではありません。作業や小さな判断を人に任せる勇気さえあれば時間はいくらでも生まれます。社長が「忙しい、忙しい」などと言っているのはちっとも自慢にはならないのです。