最適の人物を選ぶべく十分に時間をかけても、時に採用フィルターをすり抜けて誤った採用をしてしまうことがあります。「採用の失敗は教育では補えない」と言いますから、誤った採用は取り返しがつきません。それは本人にとっても会社にとっても不幸なことです。
しかし、最適の採用といっても、完全なる人物に出会うことは砂漠でダイヤモンドを探すようなものです。そもそもそんな人物が中小企業の採用面接に来るはずがありません。
他人に最適を求める前に自分自身を振り返ってみても、恥ずかしくなるほど完全なる人物とはかけ離れています。そんな自身の物差しでする人物評価ですから、まあいい加減と言えばいい加減なものです。
採用に当たっては、実務面の知識スキルはもとより、明るく前向きでコミュニケーション力があり、仲間を大切にし気配り上手な人材がいいと思うのですが、すべてにおいて10点満点という人はいません。ある一定の許容範囲の中で求めるしかありません。
一定の幅の中で採用したのなら、その人の足りない部分を埋めようとするのではなく、強みとしているところをより伸展させられたらいいと思います。それぞれの欠点を改善して平均点以上になったところで、個性のない金太郎飴のような社員ばかりになります。それよりも、各人の強みや魅力的なところを認め合い、個性を伸ばした方が活力のある組織になるはずです。
そもそも長所と短所は表裏一体なものなのです。「面倒見がいい」≒「おせっかい」、「慎重」≒「時間をかけ過ぎる」、「粘り強い」≒「ガンコ」、「気配り上手」≒「積極性に欠ける」、「強気」≒「確認しない」。短所を修正しようとすれば長所も薄れてしまいます。そもそも長所伸展で成功した人は数いれども、欠点修正で成功したというはなしは聞きません。
船井幸雄さんは「人間は好きなことだけやっていればいい。長所を伸ばせば短所や欠点は気にならなくなる」と言います。お客さまに迷惑をかけるほどの見過ごせないマイナスの個性は矯正しなくてはいけませんが、そうでなければその社員のいい面に注目し伸ばしていけた方がいいのです。