成果主義

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 このごろでは、成果主義を重視した人事制度は一時期ほど聞くことがなくなりました。ビジネスにおいては結果に焦点を当てることは当たり前ではありますが、そこに重きを置き過ぎると弊害も生じてしまうからです。

 成果主義のすべてが悪いとは言いませんが、それによって成果を上げ評価される人は組織全体では上位2割程度の人だけで、その他大勢の評価されない社員は逆にやる気を失ってしまう傾向があります。それでは結果として組織としての生産性は下がってしまいます。そもそも、成果主義とは個人の成果を上げることが目的なのではなく、組織全体の成果を上げることが目的なのです。

 生産性という意味においては、出来ることなら上位2割の成績をさらに伸ばすことよりも、その他8割の仕事ができない人たちのパフォーマンスを上げる方が組織としての生産性は上がるのです。

 成果を出せば評価される人事制度の下では、頑張って実績を残せば年齢やポジションに関係なく正当に評価される一方で、次のようなデメリットもありますから注意が必要です。

 ・目先の成果のみに関心と努力が集中し、本質的な生産性の向上を失う
 ・成果を数値化しやすい部門とそうでない部門の間で不公平感が生じる
 ・社員の意識が個人主義的に偏り社内の連帯感が喪失する

 また、すべての人が成果をお金や地位で評価して欲しいと考えているわけではありません。給料が安いからといって、会社を辞めていく社員は100人に一人もいないのです。評価されない、任せてもらえない、成長できない……社員が辞めてしまうのはこんな理由からなのです。

 そもそも本当の成果主義は、会社側に減給や解雇が簡単にできるシステムが存在する状況下でないと機能しませんから、日本の会社ではそれが根付く土壌がないのではないでしょうか。真の実力主義社会とは弱肉強食社会であり、あまり楽しいものでもありません。

 そもそも、旧来の年功序列制度においても、働こうが働くまいが待遇にまったく差がつかないなんて会社は見たことがありません。年功序列、終身雇用制度の下に多少の成果主義を取り入れる程度がいいのではないでしょうか。経営者の都合による合理化の道具として成果主義を使うのもどうかと思いますが。