よく「褒める時は人前で、叱るのは陰で」と言います。「褒める時には男性は人前で女性は個別に。また叱る時には男性は人陰で女性は人前で」などと訳の分からないことを言う人もいます。みなさまは褒める時や叱る時、どのように相手と接しているのでしょうか。
神様のように素晴らしく温厚なわたしも、時には社員を叱ることがあります。当然、社員にもプライドがありますから、かつては社員を叱る時には別室に呼んだものでした。それでどうなったかというと、保たれるは社員の体面のみだったような気がしています。したがって、今では叱る時には人前でやるのがいいと考えるようになりました。
誰だって叱られる時は人前よりも陰の方がいいに決まっています。しかし、叱られていることを知らない他の社員は、叱られる行為や決断をした社員を会社が黙って見過ごしていると思っていますから、それでは他の社員に対する影響もよくありません。
これは経営者だけではありませんが、叱るという行為も自分自身の価値観の表明です。ぐっと堪えなくてはならない場面もたしかにあります。しかし、褒められて育つ社員ばかりではないのですから、叱るべき時には叱らなくてはいけません。
時間に遅れる人、挨拶がイマイチの人、だらしのない人、似たようなミスを繰り返す人、気が利かない人……これらを注意してすぐに直るようでしたらとても出来のいい社員なのです。ですから、あまり出来の良くない部下を、叱らず にいい顔をして優しく指導しているような上司では職務放棄というものです。そんな上司ならいなくてもいいかもしれません。
そうは言っても、叱り方は難しいものです。人前でやるのは特に難しいことです。叱ることで相手がどう反応するかは叱る側の能力が問われる瞬間でもあります。
「どういう育てられ方をしてきたんだ」「お前の根性が曲がっているからだよ」などと、人格を否定するような叱り方をしたのでは逆効果です。これでは相手は間違いさえ認めたくなくなります。やった判断や行為について叱るのであって、人格や人生観の否定をしてはなりません。
しかし判断や行為は人格や人生観の表われでもありますから、最後は奥深い部分にいい影響を与えるような叱り方が理想です。そのためには叱る側にも勉強と気高い人生観が必要となります。
それにしても不思議に思うことは、社員も家に帰れば父親であり母親であり家庭内の中心的な存在である人が多いのですが、会社では子どものように叱られるのが当たり前になっている人がいることです。どうして家庭の人格と会社内の人格に違いが出てしまうのでしょう。会社内においても責任のある父親や母親のように自信を持った判断と行為をしていれば、叱られるどころか社内での評価も立場も格段に上がるように思うのですが。