店舗の引越し

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 都内の幹線道路の渋滞もずいぶん解消されているようです。ガソリン値上げの影響が大きいのでしょうが、昨年末くらいから急激に落ち込んでいる景気と相俟って空気感があまりよくありません。経営者の悲鳴に近い声があちらこちらから聞こえてくるようです。

 売上が伸び悩んで業績が悪くなると、経費削減を考えるのはどの経営者も同じです。そんな時、家賃の節約のためにと店舗やオフィスを駅から遠く離れた少し不便な所に移転する会社があります。固定費のなかでも家賃は人件費についで比重の重い経費ですからその気持ちもよく分かります。

 それで確かに経費は節約できてしまいます。しかし本当にそれでいいのでしょうか。緊急時には目先の経費にこだわることも大切なのかも知れませんが、経費とともに大切なものも失っているということはないでしょうか。

 不便な場所への移転で、営業マンの日々の外出時のロスタイムは増えていませんか。社員の移動時間はコストを生みはしても収益は一切生みません。ロスタイムが増えることによってお客様との接触時間が短くなってしまうようでは本末転倒というものです。

 それに、会社が駅から離れてしまっては社員の採用に困りはしませんか。なにより会社の雰囲気が後ろ向きになりはしませんか。不便なところに引っ越すことで、家賃が目に見える形で減ったとしても、通勤費、残業代が増え反対に売り上げが減るようでは何のための移転なのか分かりません。経費が減る計算だけではなくて、それと並行して起こる現象まで含めて総合的に判断して欲しいものです。

 お客様の来店を基本とする店舗の場合にはさらに注意が必要です。というのも、人は心理面において町の中心に向かう時の距離感と、反対に外側に向かう時の距離感には3倍もの違いがあるそうです。

 つまり、お客様の住む家から駅に向かって1㎞にあるA店と、反対に駅から遠ざかった300m地点にあるB店とでは、心理的距離感はほぼ同じなのだそうです。

 ということは、あなたのお店の商圏は店舗を中心にして駅とは反対側に長い楕円形となっているのです。あなたがターゲットにしている住宅地が店舗と駅との間に位置している場合には、そこのお客様はあなたのお店に実際の距離以上の心理的な距離感を感じているのかもしれません。