あなたはレストランオーナーです。あなたのお店は5,000円のコース料理が中心で、ドリンクと合わせた客単価は7,000円です。原価率は40%ですから一人当たりの粗利益は4,200円です。このところの売り上げ不振のため、なにか工夫をしなくてはなりません。
そこで、まずは集客のためにホームページを作ってみました。ホームページの管理費は月々40,000円かかります。このホームページを見て来店されるお客様は月に20人いますので、一人当たりの集客コストは2,000円です。
さらに「ぐるなび」などのポータルサイトに登録して、「このページをプリントアウトして持参するとお一人1,000円引き」のクーポン券を使って集客することにしました。ここでも一人当たりの集客コストは1,000円です。
すると、たまたまメディアに取り上げられる機会があり、お客様が一気に増えることになりました。ありがたいことに予約もなかなか取れない状況です。しかし、2〜3ヶ月もするとブームも去り落ち着きはじめたのですが、それと同時にブームに嫌気がさした常連客も去ってしまいました。
結局、集客コストをかけても、メディアに取り上げられても、長い目で見たらメリットがないことに気付きました。ならば、今までの集客コスト分を食材に回し、一人当たり400円を食材に余分にかけて味を格段に高めることにしました。これなら口コミで集客できるだろうと踏んだのです。
思惑どおり徐々に口コミによるお客様が増えてきました。ところが口コミで来店されるお客様は現在のお客様と似た層ばかりです。違う顧客層にアプローチできないため、広がり方に力強さがありませんし、お客様の高齢化とともに客の入りは次第に先細りとなってしまいました。
新しい顧客層にアプローチするためには口コミだけでは厳しかったのです。やはり宣伝活動も必要であったのです。看板、チラシ、ポスティング、電話帳広告、ホームページの充実、グルメ雑誌にラジオの宣伝と思いつくままいろいろやってみました。
こんどは、これまでとは違う傾向のお客様もたくさん来店されるようになりました。ところが、喜びもつかの間、いい気になって広告宣伝費に予算を使いすぎたために赤字に転落です。
いくら集客できたところで赤字になっては元も子もありません。仕方なく、赤字分を取り戻すために食材費を削ることにしました。これであれば、原価率を4〜5%落とすだけで簡単に黒字転換できてしまいます。
しかし、これも一時しのぎで終わってしまいました。「値段に見合っていないお店」と評判は下がりお客様が減ってしまったからです。
ならばと、次は客単価を増やすために5,000円コースに加え8,000円と10,000円のコースもつくってみました。まん中の8,000円コースに誘導するためです。
メニューを増やしてみると確かに、客単価は増えました。しかし同時に、食材の仕入れに無駄が生じるようになっただけでなく、現場のオペレーションが複雑になりお客様もストレスを感じるようになってしまいました。
結局どのようにやっても、すべてがうまくいくわけではないのです。あちらを立てればこちらが立たずといった状態です。
これらのことから分かるように、マネジメントは顧客単価、集客コスト、顧客原価、販売数量の4つの変数をバランス良くコントロールすることなのです。会社はこの変数がバランス良く機能したときに利益が出て、バランスを失ったときに赤字になってしまいます。やってみなければ分からないことも多いのですが、ずっと同じままではいずれバランスは崩れてしまうものです。常に仮説→実行→検証→改善を繰り返すしかないのです。