『ため息をつくと、ひとつ幸せが逃げていく』……どこかのラジオで聞いたフレーズです。このフレーズに影響されたわけではありませんが、わたしはため息をつくことがありません。ウソは時々ついても、ため息だけは神に誓って絶対につきません。だからどうしたっていう話かもしれませんが、自分では悪くない習慣だなと思っています。
否定的な言葉を口にすることは潜在意識にとって良くないそうです。それは、潜在意識にマイナスのイメージを擦り込むことになるからです。近年の脳の研究によれば、脳は現実に体験したこととイメージしたこととの区別はつけられないそうです。つまり、なりたい自分や成功している自分を、現実になっているものとして繰り返しイメージすることは、成功体験を繰り返すのと同じことなのです。反対に、潜在意識にマイナスのイメージをインプットすることは、良くない体験をするのと同じですからマイナス思考になってしまいます。そんなわけで、脳にマイナスのストロークを与えるため息をつかないことは、良い習慣に違いないとわたしは信じております。
日ごろの判断や行動は潜在意識によっているところが多く、潜在意識と顕在意識の比率はどうやって計ったかは知りませんが20000:1なのだそうです。確かに普段、顔を洗うことも、食事をすることも、歩くことも意識してやっている人はいません。習慣は潜在意識で行なわれるものですから、良い判断や行動の習慣を身につけることが成功へのもっとも合理的な近道と言えるでしょう。『前向きにならなくては』と思った時点でその意識は顕在化しているのですから、既にプラス思考とは言えません。『前向きにならなくては』と思わなくても前向きでいられることが、潜在意識による良い習慣なのです。
ヒトは誰もが元来はプラス思考で生まれてきたのではないでしょうか。生まれたばかりの赤ちゃんに思考があるかどうかは別にして、何にでも無防備に興味を示し、食べられないものまで口にするのですから、少なくともマイナス思考ではないことは確かです。ところが、わたしたち凡人は成長の過程で失敗や挫折を繰り返すことで、いいえ本人が経験していないことさえも周囲の大人の経験による教え込みによって『失敗するのではないか』『ムリに決まってる』『嫌われるのではないか』と次第にマイナス思考になってしまうのです。つまり、それらはすべて後天的なものなのです。
習慣化されたプラスの心構えの下で努力を重ねることが成功への近道であり、ただただ努力を重ねるだけで成功するのではありません。残念なことですが、わたしの両親は真面目な努力家でしたがごくごく平凡な人生を送っています。また、プロ野球もメジャーリーガーよりもマイナー選手の方がはるかに努力をしているのですから、努力をした誰もが成功するわけではないことが分かります。
誰でも失敗を経験するのですが、マイナス思考の人は失敗をすると『またやってしまった』『もうダメだ』と思うのに対して、プラス思考の人はそれも成功を掴むための試練ととらえられるのです。そしてその試練は辛いばかりではなく、大事なものを得るためには越えるが当然と思うからこそ、その後の展開も違ったものになるのではないのでしょうか。
「自分は今、うまくなっている途中なんだと思って頑張ります」
……ハニカミ王子こと石川遼くん(2007年ブリヂストンオープン最下位予選落ち後のインタビューで)