髙津
もう20年以上前の話になります。私が初めて会計事務所の面接を受け、この仕事を続けている原点の話です。
面接をしてくれた上司は、背広はヨレヨレで煙草のにおいが染みつき、指先もヤニで真っ黄色。会計事務所ってもっとお堅い職場で、まじめな人しか働いていないと思っていたので、びっくりした第一印象でした。
当時まだ2歳の息子と二人暮らしだったこと。経理経験はあるものの、売掛金と小口現金しか担当ではなかったこと。それでも子供のために安定した生活を送りたいと強く願っていたこと。面接の中で色々な話を聞き出されました。
この世界は一人前になるのに最低3年はかかるから、今すぐに全てができるようにならなくても大丈夫だからやってみますか。
そんな言葉で受け入れてもらった職業会計人としてのスタートでした。
覚えることは数知れず、何から勉強すればよいのか、何までできればよいのか、学校にも行きたかったが、2歳の子供を抱えては簡単にいかず、ただただ焦るばかりでした。
いつも不安で仕方なかった私に、その上司が教えてくれたのは「むつかしいことを考えなくても良い。事実だけを追求すること」、「お客様の生き様をしっかりと受け止めた仕事をすること」。
こんなことも言ってくれました。『何かあれば俺が責任をとるから安心してお客様に向き合ってこい』。
そこに税法や会計学は全くありませんでした。もちろんだからといって勉強が必要ない訳ではありません。職業会計人は常に勉強が大前提です。
そんな上司は60過ぎで亡くなってしまいました。今でも何かにつまづいたり、失敗した時に大きく受け止めてくれた事を思い出します。そして自分が年齢を重ねてきた今、同じような大きな心で様々なことを受け入れられているのか自問自答しています。
毎年春になるとラガービールを持ってお墓参りに行きます。いつでも良い報告ができるように、これからも前向きに頑張っていきたいと思います。