倉又
新型コロナウイルスに関連して緊急事態宣言が出されることが決まりました。これから世の中はどうなっていくのか、とても心配です。
心配といえば、私の母は肺がんを患っています。ステージ4、いわゆる末期ガンです。
現代医学の進歩はめざましく、新しい薬や治療法が次々開発されています。医師から『投薬を6ヶ月行い時間が稼げれば、新しい可能性が出てくる』と言われ、母は薬を飲んでいますが、幸運にも丸3年以上効いています。しかし、最近薬で抑えられない小さな新しいガンが見つかってしまいました。
新型コロナウイルスで混乱しているこの時期、母は検査入院することになりました。肺に小さな穴を開け、がん細胞を取って検査します。
通常はすぐに穴が塞がって数日で退院できるそうです。しかし、うまくいかないと肺がしぼんだ状態になり、気胸という病気になって退院まで数週間かかるそうです。
母は高齢なうえ呼吸器系の病気なので、万が一新型コロナウイルスに感染してしまうと…。ガン細胞を検査して遺伝子の型が合えば、新薬や他の治療法で楽になり、長生きしてくれる可能性もあります。今はまだ薬が効いていますが、この危険な時期に入院しなくてもと複雑な気持ちです。
私は父を肺がんで亡くしています。当時は新潟に両親が住んでいて、実家に帰るのは半年に一回くらい。帰るたびにしぼんでいく父を目の当たりにしながら、どこか他人ごとだったというか、頭ではもう長くないだろうと分かっていながらも、まさか父が亡くなるとは思ってもいませんでした。
何か出来ることがあったのではないか、話をしておくべきことがあったのではないか。そもそも親孝行もしていないし…。そんな後悔があったなか、母のガン発見…。母は毎日父を見ていたので、自分の近い将来を想像できたであろうと思います。
ここのところ、母にはなるべく顔を見せに行ったり、買い物を手伝ったり、話をしたり、それくらいしか出来ていません。こうやって過ごせる時間もあとどれくらいかわかりません。今年は新型コロナの影響で、家族で桜を見に行けませんでした。来年の桜を一緒に見にいける保証もありません。
それでも、いつも笑って過ごす母親のように希望を持って、今まで当たり前に思えていたことも当たり前なことではなく、感謝の気持ちを忘れずにありたいです。
『笑って過ごしていたらびっくりするくらい薬が効いてくれた』とよく母が言います。まさに笑う門には福来るです。大変な世の中ですが、笑いながら毎日元気に過ごしていきたいです。