「自分は社長より腕がいい」と豪語する社員、「私は先生より注射が上手い」と胸を張る看護師……こんな人に出会うことがあります。この人ケツが青いなと思う瞬間です。毎日同じ仕事をしているのですから出来て当たり前です。
かつて新卒で働いた銀行で、「私は支店長代理より為替の知識がある」と胸を張った女性行員を思い出します。どうしてそんなことでエラぶるのかと思ったものです。
一番仕事ができる人が社長になるとも、出世頭になるとも限りません。社長業やマネジメントはまた種類が違うのです。
小さな人間には、相手の大きさが分からないのです。器が違うのですから分かりようがないのかもしれません。
自分自身の足りなさや至らなさに気付くと、周囲のありがたさが身に沁みて感謝の気持ちが出てくるものです。感謝が足りない人は、何ごとも存在するのが当たり前なのです。
私の知人に、かつて一度は起業したものの事業に失敗した人がいます。残った借金はその後勤めた会社のサラリーから返済したそうです。
その人は、社長の右腕として会社には十分貢献しながらも、「社長に拾ってもらった」と感謝を言葉にします。決してエラそうにすることはありません。
苦労して、挫折して、悩んで、もがいて、反省して、その鍛錬の中で煩悩が次第に純化される。これは人間力が高められる過程なのかもしれません。
苦労が足りない私にはまだまだです…。