池田
人間は五感から得られる情報のうち、8割以上を視覚から得ているそうです。試しに自宅の中で目を閉じて歩いてみると、物にぶつかったりつまずいたりしてしまいました。もしこれが初めての場所で、しかも真横に車が通る道路だとしたら…。外出することがどれほど怖いことか、想像に難くありません。
視覚障がい者の方が駅のホームから転落してしまったニュースの特集を見て、視覚障がい者の方にとって駅のホームが特に危険な場所だということ、そして声をかけて案内してもらえると助かる、と思われている方がいらっしゃることを知りました。
それからは白杖を持った方を見かけると「何かお手伝いできることはありませんか?」声をかけるようにしていますが、はたして歩きやすいようにうまく案内できているだろうか。迷いながらの声掛けが続いていました。
そんな折、「純度100%の暗闇」を体験できるというダイアログ・イン・ザ・ダークを知り、友人と参加をしてきました。ダイアログ・イン・ザ・ダークとは、視覚障がい者の方がアテンドとなり、数人の参加者とともに「純度100%の暗闇」を白杖を使って歩く、というワークショップです。
最初は白杖を持っていても一歩を踏み出すのがとても怖く、壁づたいにすり足でないと歩けませんでした。そのうち他の参加者たちと「段差があります!」「入り口はこっちです!」とお互いに声をかけ合ったり、手を取り、助け合いながら移動するようになり、アテンドの方のサポートもあって無事全員が目的地にたどり着くことができました。
達成感を感じながら光の世界に戻ったときに、アテンドの方から「みなさんは今日と同じぐらい、普段まわりのひとに声をかけたり優しくできていますか?」と問いかけられました。
一時の暗闇をイベントのように楽しんでいた自分がとても恥ずかしくなり、他にも様々な感情が込み上げてきてなんだか胸の奥がぎゅっとなりました。思いやりとはなにか。暗闇の体験だけではない、参加してみて初めて気付くものがたくさんありました。
百聞は一見にしかず。皆さまもぜひ純度100%の暗闇を体験してみてはいかがでしょうか。