大石会計の創業は1989年です。この年の年末には日経平均が38,915円の過去最高値(2023年1月末27,327円)を記録するなどバブルは真っ盛りでした。
当時の私はまだ29歳、お金がない起業だったのでオフィスを借りることもできず、新婚生活を送っていた木造2DKのアパートにPCとコピー機を持ち込んだだけの小さな小さな開業でした。それでもやる気だけはマンマンでした。
翌年には国立市内にワンルームの事務所を借りることができました。看板もない、スチールのデスクと棚だけのささやかなオフィスでしたが、いま思い返してもあの充実感はその後にも経験がありません。
開業当初に理想としていたオフィスは、1階がオフィスで2~3階が自宅という税理士事務所としてはよくある形態です。しかし貧乏税理士にとって当時の都内の不動産は高嶺の花でした。
その後は事務所の成長とともに10坪→20坪→45坪→120坪→200坪と5~6年ごとに引っ越すことになります。その時々のテーマは、少し広くて、少し立派そうに見えるオフィスです。理由は、お客様や社員にとって見た目を含めた環境が肝心と考えたからです。
当初の理想通りの自宅兼オフィスは実現できませんでしたが、結果としてそれが良かったと後になって気づきます。
自宅の1階をオフィスにしていたら、いまの50人を超える社員たちとの出会いはなかったはずです。無意識に制限をかけ、その器に見合った自分になったと思います。
その経験から、私は20年前から『ヤドカリ経営』を推奨しています。店舗やオフィスは賃借して、理想や成長に合わせて、その都度少し広め、少し贅沢、少し駅に近い器に引っ越すのがいいのです。結果としてワンランク上の器に見合った自分たちになれるはずですから。