この頃、経営者同士が顔を合わせると、「人がいない」「採用できない」「若者はどこに行っているのだろう」があいさつ代わりになっています。
採用市場においては、特定の業種や会社に人が集まっているから、他が採用できないのではなく日本全国が総人手不足になっているのです。
過去15年で日本の人口は250万人以上減っています。これは私の出身の山梨県3つ分の人口が減ったことになります。全国的に万遍なく減っているから衝撃を感じないのですが、5年に一つずつ山梨県、和歌山県、佐賀県レベルが消えてなくなったのと同じなのです。
それ以上に衝撃なのは生産年齢(15~64歳)人口の減少です。この20年間で1200万人減っているのです。日本の人口の1割、東京都の人口レベルが労働市場から消え去ったのですから採用市場に人がいないのも納得できます。
そんな状況ですから採用市場において若者たちは引っ張りだこです。人口減はこれからも続くので、若者たちはますます大切にされ、やがては日本中の労働者が大切にされる時代が来ます。
と、なれば良いのですが、現実はそんなに甘くはないものです。今この瞬間大切にされているだけかもしれません。若者たちも10年、20年経つと若者ではなくなります。大切にされるのではなく、大切にする側になるのです。
思えば、今を遡ること30年、世の中がバブルといわれた時代がありました。新卒者は“金の卵”ともてはやされ、企業側から接待までされて採用された時代がありました。大卒者は上場企業入社が当たり前、本人の実力以上の立派な会社に就職できたのです。
それは結構なことなのですが、就職してみると周りの先輩たちとはレベルが違いました。結果、当時の若者たちはバブル世代と言われ各社でお荷物になったものです。
良いことがいつまでも続いてくれたらいいのですが、そんなに甘くはないのです。人手不足が続いたら、やがて神の見えざる力が働きどこかで落ち着く時が来ます。その時に実力が劣る人たちは、労働市場において価値を保てなくなるはずです。
中小企業の経営者で年収が2000万円以上は珍しくありません。その大多数は大企業出身者ではありません。中小企業の待遇も大企業に負けない会社もたくさんあります。
人生トータルで考えると、どの会社に就職するかよりも、実力をつけて己の価値を高めることが充実した人生につながるのではないでしょうか。
「鶏口となるも牛後となるなかれ」・・・私はそうありたいです。