私は顧問先の社長に、「税金は払った方がいい」と言う変わった税理士です。はじめは怪訝そうな顔をされる社長も私の説明を聞くと概ねご納得いただけます。
もちろん、「ハイ喜んで」と税金を払う社長はいません。同じ利益だったら税金は安い方がいいに決まっています。
税金を払いたくなければ利益を減らせばいいのですから簡単な話です。利益を減らす方法はいくらでもあります。しかし、その多くは資金流出を伴うのでそれを採用する社長もまた少ないのです。
そもそも何のための会社経営なのでしょうか。お金のためとは言わないまでも、利益を上げることはすべての経営者にとって重要な命題の筈です。
稀に、「儲からなくてもいい」と言う社長がいますが、家族経営の会社でしたらそれも結構。しかし社員を雇ったら、社員のためにも悠長なことは言っていられません。会社を長く続けるのは経営者に課された社会的責任です。続けるためには利益は絶対条件なのです。
一般の方が会社の決算書を見る機会があるとしたら、まず損益計算書の売上高→利益の順に見ると思います。
でも、私たち専門家が見るのは貸借対照表からです。それも現預金や借入金の額ではなく資本の部から見ます。
この会社の社長がどれだけやり手であるか、どれだけ顧客から支持されているかはそこに表れます。売上げや利益は、たった一年限りの結果です。結果が良くても悪くても翌年はリセットされまたゼロから出直しです。
しかし貸借対照表には創業以来の積み重ねが表れています。1~2年の好業績くらいでは誤魔化せません。
資本の部は税金を払った後の利益の累積ですから、立派な会社かショボい会社かは一目瞭然です。つまり税金を払ってない(払えない)会社はここを見たら一発で分かるのです。
この資本の部に厚みのある会社には、放っておいても銀行はお金を貸してくれます。しかも好条件で。更には融資を受ける必要さえなくなります。
ここが薄っぺらな会社の銀行取引はその反対です。誰だってそんな危なっかしい会社にはお金を貸したくありません。結果ますますビジネスが上手くいきません。
税金を払わないために経費を使うのではなく、より多くの利益を上げるために経費は使うのです。利益に関係ないところの経費はすべて削減対象でいいのです。