先日、某大手企業の幹部様向けに「人材育成」について講演する機会をいただきました。大石会計の社員の振舞いを見てのご指名だったのでしょうか。ありがたいことです。
何がありがたいかって、税法や会計ではなく「人材育成と職場風土」のテーマでの講演オファーをいただけたことです。
しかし、このテーマについて私自身が明解な答えを持っているわけではありません。私は税理士であり実務家ですから、実際にやっていること、心がけていることしか話せません。
社員が育たない全ての原因は、育てようとする側にあります。人が影響を受けるのは、テクニックではなくて生き方です。つまり、尊敬する人の前ではやる気になり、そうでない人の前ではやる気をなくします。
社長を含めて幹部社員がこれを本当の意味で理解できたら、社員は目覚しく成長するはずです。幹部社員の評価は、部下からどれだけ尊敬されているかを基準にしてもいいかもしれません。
私も、かつては社員をさんざん怒鳴ってきました。「どうして分からないんだ」「仕事だから当たり前だろ」……自分がされたように厳しい指導が社員を育てると思ったのです。しかし、それで結果は好転しませんでした。
結局たどり着いた答えは、すべては自分次第ということです。何を言うかではなく、誰が言うかが大切。こちらが変われば相手も変わる。
もし言っていることで相手が変わるのだとしたら、「立派な人になりなさい」「正直者になりなさい」「前向きになりなさい」と言っていれば、日本中が、前向きで、正直者で、立派な人ばかりになります。しかし、そうはなりません。それを誰が言うのかが大切なのです。すべてはこちら次第。
偉そうに言っていますが、私はここに書いているほど立派な人間ではありません。いちばん難しいのは自分自身の心です。狡い自分、腹黒い自分、意地悪な自分、ちょっとエッチな自分……108つの煩悩は小さくありません。
同じように社員にも煩悩があり、苦手なものがあり、そして素晴らしい役回りがあります。それを分かってわが子のように接することが出来たら、社員の首根っこを押さえて厳しいことを言っても素直に受け入れるはずです。でもこれがなかなか出来ないんですよね。これも嫌われたくないという煩悩か……努力あるのみですね。