叱り方

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 あなたは叱り上手ですか、それとも……。私は、部下をきつく叱り過ぎて自己嫌悪に陥ったことが幾度となくあります。

 夜になって、「いまごろ悔しい思いをしていないかな」、「眠れていないんじゃないかな」……親がわが子の寝顔を見て、昼間感情的になって怒ったことを反省する心境です。

 叱り方が上手か否かは、部下が期待通りに変化したかがすべてです。それも、叱った直後ではなく1~2ヶ月後です。叱った直後の部下は必ず変化します。立場が違う私に言われたら変化するしかありません。この変化を見て、正しい指導をしていると思うほど私は短絡的ではありません。心に届いているかどうかは、時間が経たなくては分からないのです。

 私も叱るときには、多少ヒートアップすることはありますが、けっして感情に任せて叱っているわけではありません。大切な部下に成長して欲しい、自立して欲しいという気持ちはいつでも持っているつもりです。

 ですが、そこは相手が感じたことがすべてなのです。相手の心に届いていなかったらその思いは無いのと同じです。こちらの思いなんて関係ありません。 

 どのように叱るのかは大切ですが、大切なことは誰が叱るかです。尊敬していない、どちらかと言えば軽蔑している人に叱られても、相手にはなにも響きません。相手の心が開かれていない状態では、どんなに正しいことを言っても伝わりません。

 正論をいう人と同じで、「あなたが言っていることは正しい、でもあなたのことは好きになれない」。私がそう思われたらおしまいです。

 かつて自分に影響を与えてくれたのは、いい上司ばかりではなく、嫌な上司や先輩ということも少なくありません。だからといって、自分が嫌な上司役を演じる必要もありません。できることなら、いい社長、大好きな社長と言われるようになりたいものです。

 このごろは、私に代わって幹部社員が叱ってくれるので助かります。それだと私はいつでもいい人でいられますからありがたいものです。

『馬を水際まで連れて行っても、水を飲ますことはできない』(You can lead a horse to water, but you cannot make him drink. :英国の諺)……行動は強制できても、心の中は強制できない。