「論語をやって何か変わりましたか?」と聞かれることがあります。残念ですが、なにが変わったとはっきり言えるほどの変化はありません。
論語を勉強したからといって劇的に変わった人を見たことがありません。劇的に幸せになった人も知りません。
むしろ学ぶことによって悩んだり苦しんだりすることすらあります。それは、自らを省みる機会が増えるからなのかもしれません。
ビジネスの世界にいると、ものごとを金銭や物質的なものだけで計りがちです。もちろんそれも大切ですが、それだけではワクワクしません。
私も税理士ですから、日ごろは数字の話が多くなります。開業したばかりのときに「税理士さんって何でも数字で計るんですね」なんて言われて凹んだ思い出もあります。
商人なんぞ江戸時代でしたら士農工商では最も卑しい職業だったのです。銭金のことは口にすることすら汚らわしいと考えられていたのが当時の日本でした。
しかし、渋沢栄一は『論語と算盤』の中で、「世の中で立つには武士的精神が必要。しかし、武士的精神のみに偏して商才がなければ経済の上から自滅を招く。ゆえに士魂にして商才がなければならない」と、つまり正しい道理の富だけが永続すると言っております。
ずるい自分、腹黒い自分、誠実ではない自分、嫌らしい自分、意地悪な自分、誰にも百八つの煩悩があります。簡単ではありませんが、昨日よりいい自分になるというのが生きるテーマのひとつだと思います。
“論語読みの論語知らず”と言われないよう、情緒豊かな人間になりたいものです。