「ハァ、テレビもネェ、ラジオもネェ~」、30年前に流行った吉幾三の曲です。今年のゴールデンウィークは、研修とはいえそんな生活を初めて体験した10日間でした。
研修の性質上、会場は山あいにありました。そこは街場の人工的な音や光から遠く離れ、昼間の緑と夜の満天の星空は、研修ということを除けば子供のときに経験したキャンプのようでした。
テレビ、ラジオだけでなくPC、携帯、新聞、書籍、筆記用具なども持ち込み禁止です。社会のすべての情報から隔離され明日の天気予報さえ分からないどころか、研修期間中に起こった震度4の地震のことすら知らされませんでした。
朝4時起床、21時消灯と、研修ですから当たり前ですがスケジュールは規則正しく行われます。食事は朝と昼のみで野菜を中心にした質素な玄米食。研修終了時に体重が3kg以上減少していたのはありがたいことでした。現代人は食べすぎなのです。
参加した60人ほどの研修生は、10日目の最終日を迎えるまで互いに会話を禁止されます。言葉だけではなく、メモやアイコンタクトを含めた一切のコミュニケーションと身体への接触が禁止です。
傍らに人がいないつもりで振舞えというのですから、お互いが目を合わせることもありません。しかし傍若無人とは 逆です。かえってお互いが気を使ってしまうのですから面白いものです。
休憩時間はトイレと食事以外にやることがありませんから、「花にも涙を賤ぎ、鳥にも心を驚かす」の杜甫の一節を思い出だしながら、毎日タンポポの生態を観察し、鶯の鳴き声を聞き続けるしかありません。
あえて研修の中身には触れませんが、私の人生において間違いなく節目となった10日間でした。