銀座の有名高級寿司店でタイムカード制を導入しようとしたところ、それに強く反対した人がいたそうです。反対したのは経営者ではありません。ベテランの職人です。厳しい修行をしたら5年で一人前の職人になれるのに、タイムカードなんて導入したら8年も10年もかかってしまうというのです。
腕のいい寿司職人になる夢を持って就職したお店でタイムカードによる社員管理……見習いはそんなことは望んでいません。早く立派な職人になりたいだけなのです。これは寿司職人に限らず夜遅くまで練習を重ねる美容師さんなど他の業界にも当てはまります。
しかし労働基準法をはじめとした法律では会社は社員の時間管理をきっちり求められます。法定労働時間を超えたら割増賃金を払い、一定時間を超えて働くことは認められていないのです。
労働時間短縮を目指す政府の考え方に私は違和感を覚えます。かつて日本人は働き過ぎとの国際批判がありましたが、大きなお世話です。過度な労働を強制することは良くありませんが、本来的には働き過ぎは悪いことではないのです。この時短の発想からはゆとり教育の導入を連想してしまいます。政策として国民に働くことや勉強することを自粛させるのもどうでしょうか。ますます国力を低下させるだけです。
かつてライフコーポレーションの清水会長は、政府が進める1800時間労働に対して、就労時間を減らした分を増員で対応することを社員に提案したそうです。社員が増えても一人当たりの人件費は減りますから会社としての給与総額は変わりません。いわゆるワークシェアリングです。しかしそれには社員から反対が出たそうです。社員としては給料が減ることはありがたくないのです。働く時間を短くして給料は据え置き、そんなおいしい話はあり得ないのです。
「ワークライフバランス」とか「ゆとり教育」とか耳に心地いい言葉にやられて、結局年を取ってからゆとりのない人生を送ることになるのです。40歳以降にバランスのいい人生を送るためにも、若いころは出来る限り無理をした方がいいのです。若ければ若いほどワークライフアンバランスがいいのです。