今年も夏の恒例、税理士試験が終わりました。発表は4か月後の年末です。1年間やりたいことも我慢して受験勉強に取り組んできた人たちは、吉報を寝て待つだけです。
私が受験したのはずいぶん前のことですが、受験勉強時代には楽しい思い出はひとつもありません。受験生活ですから当たり前といえば当たり前です。
私は大学卒業後、地方銀行に入行して3年目の24歳の時に通信教育で勉強を始め、その翌年銀行を退職、1年間の受験浪人を経て27歳で税理士試験に合格、29歳で開業。結果だけを見るとトントン拍子に受験、修業時代を駆け抜け、ほんの数年でまったく違う人生の展開を迎えました。
合格まで平均8.6年かかるといわれるのが税理士試験です。私を含めて普通の能力の人が短期間で合格しようと思ったら、他人より密度の濃い勉強をするしかありません。
勉強だけでなくスポーツや仕事も同じですが、基本的には能力の高い人の方が出来がいいに決まっています。その差を埋めるには、つまり凡人が天才に勝つには集中的な努力しかありません。ところが、その努力をするのにも努力のできる能力が必要なのです。凡人にとって努力とは、それほど長く続けられるものではないのです。
努力を長く続けるには、目的が明確になっている必要があります。何のためにやっているのか、誰のためにやっているのか、自身の潜在意識の中で納得できていない努力は続けられません。若いときに明確な目的が描けたなら、その後の人生はまったく違うものになる筈です。
「男の人生は30歳までで決まる」。私は子供のころ、父からこう言われて育ちました。当時はよく理解できませんでしたが、若いときに手抜きをしていたら人生後半で取り返しがつかなくなるということは、今ではよく分かります。
反対に、若いときの数年間を真剣に取り組んだら、充実した人生の後半戦を迎えられる可能性がグッと高まります。一生かけて頑張り続けることはありません。やるべきタイミングでやるだけなのです。努力するにも天の時があるのではないでしょうか。
『為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり』……上杉鷹山(第9代米沢藩主)