何ごとにつけ悪者にされるのがストレスです。ストレスとはそんなに悪いものなのでしょうか。確かに、精神を患っている人や弱い人にとって、ストレスは諸悪の根源でありますから、これから私が書こうとしていることは多くの方からお叱りを受けてしまうのかもしれません。
そもそも、健常者にとってストレスとはなかったら困るものではないでしょうか。ストレスのない世界では、肉体も精神も逞しく成長してくれそうもありません。つまり、脳を鍛えるのも、肉体を鍛えるのも、精神を鍛えるのもすべてはストレスの助けが必要なのです。
もちろん過度のストレスには問題はありますが、本当に強くなろうと思ったら、ストレスは強いほどいいのです。マラソン選手や水泳選手が高地トレーニングをやるのは、心肺機能にストレスを与えるためなのですから。
現代人はストレスに弱いと言われます。それはもしかしたら、子どものころにストレスの少ない恵まれた環境にいたからということではないでしょうか。優しい人に囲まれて育つことはいいことですが、ある程度厳しさを持った親の下で育てられないと弱い子どもになってしまいます。つまり、恵まれていると思われた環境が、後になって実は恵まれていなかったということになるのです。
精神科や心療内科の先生に診てもらうと、体調不良はみんなストレスのせいになってしまいます。それでは、ゴルフのミスショットの原因を「ヘッドアップ」としか言えない中級ゴルファーの診断と同じです。「眠れないことがありますか?」、「食欲がないことがありますか?」、「不安になることがありますか?」、そう問診されたら誰だって「YES」と答えるしかありません。
こんなことを書いているとお医者さんをはじめ多くの方から批判を受けそうですが、ストレスのない環境をつくるのではなくて、専門家らしく上手なストレスの与え方や解消法を指導してもらいたいものです。
精神疾患の予防はストレスを与えないのが一番だと思いますが、そういう人を基準とした教育モデルやビジネスモデルは、普通の社会にはありません。良いとか悪いとかの議論は別として、世の中の大半の仕組みは健常な人を前提としているのです。基準をどこにおくのかによって、長い間にはまったく違う組織、違う社会になってしまうのです。
ストレスのない楽しい世の中なんて何処かにあるでしょうか。そもそもそんな世の中は楽しいとは思えません。「忙中閑有り」や「苦中楽有り」がいいと私は考えます。忙しい中のほんの一時の閑こそが本物の閑であり、楽しいだけでも毎日がパラダイスとはいきません。閑ばかり、楽しいばかりは、人間を頽廃させてしまうというものです。