みなさまの会社では社員の採用はどのような基準で行っているでしょうか。知力、体力、人格、環境適応力など会社によって採用基準は様々です。
日本電産ではかつて「大声試験」によって採用を決定したことがあります。リーダーシップを発揮して人を引っ張っていく人は、声が大きいし相手の目を見てはっきりしゃべると考えたからです。
「大声試験」のやり方は、ひとつの文章を用意してテストを受けに来た学生に順番にこれを読ませ、声の大きな順に採用するというものです。声の大きさだけでなく、堂々と自信を持って読んでいるかもチェックの対象です。
たしかに多くの経営者とお付き合いしていると、有能な経営者には声の大きい人が多いことに気付きます。声の大きい人がいい経営者になれるとは限りませんが、いい経営者には声の大きい人が多いのは明らかです。
経営者だけではなく社員も社内で立場が上の人ほど、つまり出世している人ほど声の大きい傾向にあります。自信なさげの小さい声の人が出世とともに大きな声になっていくのではありません。ならばはじめから声の大きい人を採用するのがいいのです。
日本電産の採用試験にはほかにもユニークなものがありました。ある年は、本試験前に食事を用意して食べさせて早く食べ終わった順に無条件に採用が決まる「早飯試験」。またある年は、素手で便器を磨きあげる「便所掃除試験」。さらに試験開始時刻より早く来た順に採用する「早出試験」や留年経験者に絞った採用試験などです。
大声=ガッツ、早飯=内臓丈夫、便所掃除=他人に気遣い、早出=時間厳守……これらは会社に入ってから身につくこともありますが、入社前の家庭生活や集団生活の中で身についていてくれるとひとつの教育課程が省略できます。少なくとも、それらに価値を感じていない人に無理に教え込んでも身につきませんから時間の無駄になるだけです。
ちなみに「早飯試験」に際して、在職中の社員にも同じ弁当を内緒で食べさせてみたところ、早飯の順位と仕事の成績は一致したそうです。「早飯試験」で採用された社員のその後は、病気もしないし会社も休まずに活躍し、もっとも成果の上がった採用基準となりました。「早飯、早糞、芸のうち」とはよく言ったものです。