多くの方にとって、今年ほど事業存続の難しさを痛感した年はなかったのではないでしょうか。振り返れば10年前、バブル崩壊後の日本経済は立ち直れずに「有史以来最悪の不景気」と言われたものでした。今となれば、当時はまだ良かったのです。あれから何度底割れしたのか分かりません。
2011年は大変な出来事が続発したように思えるのですが、今になると思いだせないこともたくさんあります。ユッケ、なでしこ、ギリシャ危機、ジョブス死亡……残念ながら、野田首相誕生すら忘れていました。
改めて今年を振り返ると、3月11日に起こった東日本大震災は、私にとってはパラダイムの大転換となった出来事でした。あれから自分にとって本当に大切なものは何なのかを確かめる場面が多くなりました。
震災による被害額は、大都市を襲った阪神淡路大震災の1.8倍に達し、原発事故などの影響を含めるとさらに大きく膨らみます。経済界では一時的な混乱はあったものの、現在の東北地方内陸部はバブル景気とも言われています。未だに不自由を強いられている方も多いのですが、早期の復興を祈るばかりです。
ファミリー企業の不祥事も印象に残った一年でありました。本来ファミリー企業の不祥事と言ったら中小企業が思い浮かびますが、今年は大王製紙や岡山のバイオ企業である林原など超優良企業による不祥事が目立ちました。経営トップの暴走を止める番頭が不在だったのです。
中小企業においては、経営者に厳しく進言できる人材が社内にほとんどいないのが実態です。同族経営である中小企業の良さは、決定から実行までがスピーディなことですが、これがマイナスに働かないよう経営者自身が自分を律した経営をしなくてはいけません。
震災の影響で苦しんでいる会社はほぼなくなりました。苦しい原因は外部ではなく内部にあるのです。環境や他人のせいにしていたのでは、そこには反省もなければ改善もありません。電柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、すべて社長の責任なのです。
来年も心して経営に当たる所存です。皆さまにとりましても、よいお年になりますように。