楽観主義はちょっと…

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 誰でもそうだとは思いますが、やっぱりわたしも前向きな人が大好きです。昨今の厳しい外部環境の中でも、将来の明るい展望を語り続ける経営者にはとても魅力を感じます。

 成功していく経営者は程度の差こそあれ前向きな人ばかりです。そんな経営者も前向きであることを普段は意識することはありません。前向きでいるのが普通のことなので、反対に後ろ向きな言動こそ意識しなければ出来ないのです。

 前向きに似て否なるものに楽観主義があります。かつてのわたしは、経営者が自社の明るい将来をいつも語っていながらも一向に業績の上がらない会社があることを不思議に思ったものでした。後になって思うと、その経営者は前向きではなく単なる楽観主義者だったのです。

 楽観主義の経営者は厳しい現実を直視することなく希望的観測に基づいて未来を予想しようとします。ありたい将来像と希望的な将来像とは全く別のものです。決していい加減な経営者ではないのですが、努力や自己犠牲といったものを避けていますから社内にゆるい空気感が漂ってしまいます。

 経営者が明るく将来の展望を語っていながら成果が上がらないのでは、社員もそれを当たり前に思うようになります。会社全体に、いわゆる負け癖がついてしまうのです。

 前向きであることは明るい未来を語ることとは違います。厳しい現状をも経営者自身が認識し、しっかりと社員に伝えることが必要であり、それが出来ず、ただ脳天気に明るいだけでは社員までもが無責任になってしまいます。厳しいものは厳しいのであって、そこから目をそむけてはいけないのです。

 たとえあなたの会社の現在が恵まれた環境の下にあったとしても、経営者には危機意識は絶対に必要です。恵まれた環境の中にも必ずマイナス要素があるはずですから。ただ明るい未来を予想するだけではなく、現状を直視して最悪の事態をも受け止め、立ち向かっていく覚悟が経営者には必要なのです。そして最後には必ず勝つという確信を失ってはいけません。これは楽観主義とはまったく違うものなのです。

 すべてが順風満帆な経営など聞いたことがありません。必ずぶつかる困難に経営者がどのように対応するのかで会社の行く末が変わるのです。結局のところ会社は経営者次第であることを心しなくてはいけません。