部下の指導に当たる上司には大きくふたつのタイプがあるように思えます。それは優しく振る舞う上司と厳しく振る舞う上司です。好きとか嫌いとかは別にして、どちらがいい上司と言えるでしょうか。
優し過ぎる母親のように部下に接する上司。部下の意見を聞き、若い人たちがやりやすいように気遣いし、多少のミスがあっても責めたりいじめたりせずどこまでも守ってくれる。そんな上司だったら誰からも慕われるものです。
しかし、この上司のもとで部下は強い意志を持ってしっかり成長できるでしょうか。わたしでしたら愛され過ぎて人生を誤ってしまいそうです。
もうひとつのタイプは、父親のように厳しく部下を指導する上司です。部下に何かの欠点やミスがあれば鬼の首を取ったかのように怒鳴りつけて責め立てる。部下は一瞬の油断もできずに緊張感を持って仕事に取り組みます。進んでこんな上司の下で働きたいと思う人は少ないものですが、厳しい上司のもとで鍛えられた部下は早く一人前になれます。
褒めて育てるとも言いますが、現実はそんなにうまくいかないことも多いのです。部下として感謝すべきは優しい上司より厳しい上司であって、その厳しさこそが経営者が各上司の立場の人に求める大切な要素なのです。少なくとも、厳しさをまったく感じさせない上司は部下の為にはなりません。単なるバカ親と一緒です。
わたし自身過去を振り返ると、意地悪で嫌な上司や先輩には「なにクソ」と腹も立てたりしましたが、そんな上司や先輩の存在があったからこそ今の自分がいるのだとありがたく思えます。人はあまりにいい環境下では独立心が失せてしまいます。
子(し)は温(おん)にして厲(はげ)し、威(い)ありて猛(たけ)からず、恭(うやうや)しくして安(やす)し。
(論語、述而篇)
……温かさの中に厳しさがあり、威厳がありながら圧迫感がなく、謙虚でありながらおどおどした感じを与えない。
こんな上司が理想なのでしょう。凡人にはなかなか出来ることではありません。