歴史は繰り返される

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 生意気なのですが、わたしの愛車はドイツ車のメルセデスでございます。と言いましても、時には高速道路上でエンストを起こしたり、朝起きたらシャコタンになっていたりする少し手のかかる可愛いやつです。走行距離は間もなく10万キロになり、いま下取りに出してもきっと査定もつけられないでしょうからこのまま乗り潰すつもりです。

 わたしがこの車を買うために輸入車専門のディーラー最大手Y社に出かけて行ったのは7〜8年前のことです。その2〜3カ月前からパンフレットを見て気分は高まり、買いたい病は相当の重症になっていました。

 少し贅沢な買い物に家内との交渉は難航するもどうにか乗り切り、夢にまで出てきた販売店行きです。こどもの様に期待感に胸を膨らませ意気揚々と当時の愛車日産グロリアでY社に出かけて行ったのです。

 ところが、そのディーラーでは予想に反して、「いらっしゃいませ」もなければ「こんにちは」もありません。多少プレッシャーのかかる無言の対応には、事前期待が高かっただけに居場所を見失った気分でした。お客の立場を抜きにしても、気にかけてほしい時に気にかけられないのはありがたくありません。

 勇気を振り絞って、「ちょっと聞いてもいいですか?」と尋ねたところ、妙に丁寧な対応をしていただけたのには少しホッとしました。

 しかし、わたしが欲しいと思っていた車種は納車までに3カ月以上要するとのこと。輸入車ユーザーにとっては別に珍しいことではないようなのですが、欲しい病にうなされていたわたしは少し迷ってしまいました。

 すると営業マンは、すぐに納車できる別の車種を勧めてきました。「こちらのキャデラックでしたらすぐに納車できますが……」。キャデラックといえばアメリカ車、わたしが欲しいのはドイツ車です。呆れた感性です。

 こちらの期待に何ひとつ応えてくれないそのディーラーを出て、その足で別のメルセデス専門ディーラーに行きました。当たり前といえば当たり前なのですが、そこでは大歓迎してくれました。日野市にあるディーラーでしたが、たまたま対応してくれた営業マンは国立市担当で、わたしの自宅も乗っている車種も既に知っていたのです。初対面にもかかわらずこちらを知っていてくれたのは嬉しいことでした。注文書をその場で書き、2週間後にはめでたく希望のメルセデスが納車となりました。 

 つい最近のことですが、知人が同じディーラーY社に行きました。あろうことか、知人はそこでわたしの時と似たような応対をされたそうです。そして同じく呆れて店を出て、その足で日野市にあるメルセデス専門ディーラーに行ったと聞きました。奇しくも、その知人はわたしと同じ店舗で同じ体験をしてしまったのです。

 これは必然だったのではないでしょうか。たぶんわたしの時とは別のスタッフが対応したと思うのですが歴史は繰り返されていたのです。すべての根源は企業文化にあると納得した出来事でした。