むかしから経営の3大要素はヒト、モノ、カネと言われてきましたが、今ではこれに情報や時間が加えられることがあります。これらのどれが欠けても経営は成り立ちません。今のわたしが「経営の3大要素は」と問われたらモノ、ビジョン、人間力だと答えます。
一つめのモノとは、商品やサービス、ノウハウなどそれぞれのビジネスで提供するモノそのものです。商売を始めるにあたって最低限持っていなければならないものですから、これがないことには何もはじまりません。
もしも、あなたの会社が持っているモノがオンリーワンやナンバーワンでしたら、そこには競争がありませんからそれだけでビジネスは成り立ってしまいます。極論を言えばそれ以外の要素はほとんど関係ないと言ってもいいでしょう。
しかしそんなオンリーワンやナンバーワンなどないのが普通の中小企業です。提供するモノそのものに磨きをかけ続ける必要はありますが、成熟した業界ほどそんなモノの本質だけでは評価されないものです。要するに、味を追求したレストランが流行るとは限らないのです。
二つめのビジョンですが、これは経営者がありたいと思う将来像です。将来どんな会社にしたいのか、お客様にはどんな思いで接したいとか、社会においてどのような存在でありたいといったものです。
これは経営者が語る夢ですから簡単に実現することができないものも多いでしょう。しかし、現時点においては実現の根拠や可能性などあまり関係ありません。将来像を思い描くということが大切なのです。ただし、社員の心に響かせるためには、その実現に向けて確実に会社を変化させていかなくてはなりません。
三つめは経営者自身の人間力です。モノとビジョンは経営のやり方とあり方ということですが、経営といえども社会活動ですから最後は人と人との関わり合いが一番重要になってきます。経営者が周りの者を巻き込んで熱く動機付けられるような人としての求心力がなくては経営がうまく機能しません。
中小企業の場合、経営者は社員からもお客様からも身近な存在ですから、この人間力の占める要素がかなり大きいのではないでしょうか。机上でどんなに優れたビジネスモデルをつくっても、経営者の人間的な魅力が加わらないばかりにうまく機能しないというケースは案外多いものです。
首都圏では、中小企業の新入社員は3年以内に4分の3は辞めてしまうといわれています。この離職率の高さは、経営者のビジョンと人間力に起因していると思いますが、皆様はいかが思われるでしょうか。