おとなの学校

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 みなさまは、どうして仕事をしているのかを考えたことがあるでしょうか。生活のため、収入を得るため、人の役に立つため、能力開発のため、可能性追求のため、自己表現のため、自己実現のため……いかがでしょうか。そこでお金のためというのでは、少し淋しい気がします。

 わたしは仕事の目的のひとつに、人として成長していくということがあると考えています。そこは単に収入を得る場ではなくて、お金をいただきながら成長させてもらえるありがたい場なのではないでしょうか。

 今の社会には良くない症状があちらこちらに表われています。反対に子どもたちは恵まれすぎていて気の毒にさえ思えてきます。将来の社会をより良くするためには、子どもたちが良くならなくてはいけませんから、教育は社会的に重要なテーマです。にもかかわらず、お国の対応も右往左往しており長期的展望に立った教育改革をしているとは到底思えません。

 もっとも、子どもの教育も学問だけでしたらともかく、躾、生き方、人生観などについては学校にばかり任せておくことは出来ません。やはり成熟したおとなに囲まれた家庭が重要ではないでしょうか。要するに子どもの教育のためにはわたしたち親の世代が良くならなければいけないのです。

 ところが今の社会システムのなかでは、おとなの公的教育機関はどこにもありません。わたしはそんな役割を果たせる数少ない場のひとつが会社ではないかと思っています。

 そのためにわたしたち経営者に出来ることは、会社を楽しいおとなの教育の場にすることです。経営者がその気にさえなればすぐにでも出来てしまいます。ただ儲けることだけに動機付けられているような経営者でしたら、お金のためだけに働いている社員と何ら変わりません。

 もし社員たちが家に帰って、会社の愚痴をこぼしたり、人間関係を嘆いたりしているようでは、子どもたちの潜在意識の中には「仕事はつまらない義務」だと刻み込まれてしまいます。

 会社が楽しくてヒトとしても成長していける場だと心から思えるような職場作り、それは経営者の務めのひとつではないでしょうか。そういった意味では、社長は「おとなの学校」の校長先生なのです。