会社の方向性

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 会社は、お金をいただきながら学ばせてもらえるありがたく不思議な所です。とくに若い人にとっては、会社内ほど学びの多いところはどこに行ってもありません。考えれば考えるほどにありがたいはなしに思えてしまうのは、わたしが経営者の立場にいるからでしょうか。もしかしたらこれは、人類が考えた最も偉大なる仕組みなのではないかとさえ思ってしまいます。

 人に何かを教えてもらってお金をいただける場なんて、会社以外にはないのです。学校、学習塾、お稽古、ビジネススクール、研修……どこだって、教えてもらったことに対してお金を払うところばかりです。少なくともお金をいただけることはあり得ません。

 18歳や22歳で入社してきた社員さんが、どれだけきちんと社会生活を送れるだけのことを身につけているでしょうか。個人差はあるにしても、そのまま社会で通用する人などいません。挨拶ひとつとっても、きちんとできる人になどお目にかかることはありません。

 社内で仕事のスキルやノウハウを学ぶのはもちろんですが、そこは社会人としての常識やマナーをも学べる場でもあるのです。さらに、いい上司や同僚に恵まれると、生き方や人生観をも学ぶことが出来るのです。そこで受ける給料を労働の対価と思ってしまっては、なんだかつまらなく思えてきます。

 そんな訳で、わたしは会社をおとなの学校だと言っております。さしずめ社長は校長先生ということになります。学校は校長次第でどのようにでも変わります。校長先生の思いの高さで、生徒の水準が変わってしまうのです。

 本業に関する知識や技術。社会人としての常識やマナー。そして一番大切なことは人としての生き方。校長先生がしっかりした教育論と人生観を持って生徒に接することで、組織に統一感が生まれ会社は力強いものとなります。

 社員の個性を重視することは大切なのですが、肝心なところでは各人の個性と感性に任せきりにしておくことはできません。企業文化を超えない範囲でのみ、社員の個性が生かされるのがいいのです。