半年前に『経営以前の社長の教科書』を出版してからというもの、わたしの経営者としての実力を高く評価してくださる方が多く、改めて本を出版することの影響力というものを実感しております。
しかし、わたしもまた悩める経営者の一人であって、お客様から顧問料をいただきながら学ばせてもらっているのですから、税理士とはありがたい職業だなとつくづく思っています。
わたしは、自分をダメな経営者だとは思ってはいませんが、かといって素晴らしい経営者だと思うこともできません。ただ少なくとも、現状に満足してそこに止まっていることは本当によくないことだと思っております。ですから、わたしはいつでも自分自身が変わりゆくことが人生のテーマであるかのように思っています。ところが、先日ある方からそれは違うのではないかと指摘されてしまいました。
その方は、どうして変わろうとすることがいけないのかについて、「変わろうとしている人は、そんな自分と同じように他人にも変化を求めてしまうからです」と言われました。誰もがそうなのかは分りませんが、振り返ってみるとわたしの場合は正にそのとおりでした。若いのにどうしてそんな所に止まっているのか、と社員に対しても思ってしまうのですから彼らにしたら迷惑なはなしです。それができていたなら今頃は大石会計の社員ではいないということなのかもしれないのです。
わたしたちは、結局のところ自分自身の本質を変えることなどできないのですから、変わるのではなく成長すると考えたらいいのだそうです。まず自分自身を肯定することから始め、そしてそこから成長していくと考えるべきだというのですから、なんだか分かったような分からなかったような気持ちでその時は帰途についたものでした。
まあ、どちらにしても何も意識することがなくては変わることも成長することもできないでしょうから、よくなる自分をイメージしながら生きていくしかないのかなと思っています。稲盛和夫さんは、昨日よりいい自分になることが生きる目的だと言われましたが、そんな心境です。
できるかできないかの結果はともかく、よくなるイメージだけは常に持ち続けたいものです。散歩の途中で富士山に登った人はいません。富士山に登ろうと思って歩いている人だけが頂上にたどり着けるのです。傍から見たら、散歩しているだけの人も富士山を目指して歩いている人も同じにしか見えないかもしれません。
ちょっと見には同じように歩いていても、志の高い人はいるものです。それが5年10年と経つと埋めようのない差となって顕れてしまいます。傍からは見えない目線の高さが、その後の事業家人生に大きく影響してしまうのではないでしょうか。