どんなに能天気に見えても、何ひとつ悩みがないという人には今まで出会ったことがありません。生きている限り悩みや心配ごとがなくなるということはないでしょう。
もっとも、同じ状況にいたとしても悩みや心配の度合いには個人差があります。経営者には少ないのですが、あらゆることを悪い方に考えてしまうマイナス思考の人もいます。
そういう人にプラス思考になりなさいと無責任なアドバイスをしたとしても、それでプラス思考になったという話は聞いたことがありません。マイナス思考は潜在意識がすることなのです。どんなに理屈で分かっていたとしても、なにか衝撃的な出来事を体験したり一定の刺激を与え続けたりしない限り、その潜在意識が変わることはありません。
わたし自身もかつては眠れないほど悩んだこともありましたが、20数年前に出会ったD・カーネギー著の『道は開ける』には大きな気づきをもらいました。そこには「悩んだことの99%は決して起こらない」と書かれていたのです。
確かに、悩んで悩んで悩みまくって、それでなにかが解決したことなど一度もありません。むしろ悩みは深まるばかりです。結局恐れていたことが実現することはなく、時の経過とともに忘れ去ってしまうのですから、あんなに悩んでいたことは何だったのかと思ってしまいます。
これと同じような経験をされた方は多いのではないでしょうか。実現する可能性の低い悩みに何日間もうなされ、結果として疲労困憊するだけで何も起こらないのでは割に合いません。そんなのはバカげていますから、開き直れるのであればその方がいいに決まっています。
とは言ってもなかなか開き直れないのが現実です。そんな時には、自分を困らせている悩みの種を忘れるほどに、いま現在の仕事に全力で取り組むのがいいのではないでしょうか。忙しい時には悩んだりはしていられません。人はふたつのことを同時に考えることはできないのですから。