社員の同質化

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「人を大切にする経営」、これは多くの優良企業に見られる傾向です。大石会計事務所もそのようにありたいと思っているテーマの一つですから、経営理念のひとつにうたっております。

 人を大切にする経営と言いますと、「優しく」「居心地のいい」環境をつくるということと勘違いされてしまいそうなのですが、そんな必要は全くありません。

 社員の目覚ましい成長を願うのでしたら、優しく包み込むような接し方をしているだけではいけません。社員が一定水準の金太郎飴のような人たちばかりでしたらそれもありかもしれませんが、実際にそんなことはあり得ません。みなさまがお子様を育てるときと同じように、褒めるだけではなく、時には大声で怒鳴ったりするのもいいのです。甲子園を目指している野球部の監督が大声を上げるのも同じです。

 なのに、理性的な人たちは、大人の集団である会社では大声をあげたり、怒鳴ったり、叱ったりしないのがいい会社なのだと思いがちです。どんな会社でも素直ないい人だけが集まってきているわけではありませんし、はじめから全員が同じ方向を向いているというものでもありません。

 大企業でも、ビジョナリーカンパニーと言われる超優良企業は、優しさではなく、自由奔放を許すことでもなく、むしろまったく逆で、自社の性格、存在意義、達成すべきことをはっきりさせています。そのため、自社の厳しい基準に合わない社員や、合わせようとしない社員は辞めていくしかなくなるのです。反対に、企業の考え方を心から信じて、献身的になれるのであれば、本当に気持ちよく働けるし幸せを感じることになるのです。

 100年企業である典型的なビジョナリーカンパニーには、そんなことを裏付ける次のような社史への記載や経営幹部のコメントがあります。

●IBM
 当社はビジネスがどういうものかについてはっきりとした考え方を持っている。当社で働くようになれば、顧客にどう対すべきかを教える。顧客とサービスについての考え方が当社と違うのであれば、当社から離れる方がいい。その時期は早いほどいいのです。

●プロクター&ギャンブル
 当社はその歴史を通じて、教化、同質性の追求、エリート主義を徹底して使い基本理念を維持してきた。採用に当たって慎重に応募者を選別し、P&G流の考えや行動を叩き込み、企業文化に合わない社員ははじき飛ばし、上級ポストには下から昇進してきた忠実な社員にしか割り当てない方針を貫いてきた。

●ノードストローム
 当社の社員は他のデパートの社員よりはるかに給料は高いのだが、当社の一員として成功するための資質は全員が持っているわけではない。プレッシャーに耐えられない人、猛烈な仕事に耐えられない人、会社のシステムや価値を信じられない人は辞めていく。大切なことはノードストロームが合っているかどうかだ。合っていなければ、会社を憎むようになり、みじめな思いをし、辞めていくことになる。

※参考:『ビジョナリーカンパニー』日経BP出版センター