富士山に登ってきました。目的は高校生の娘との思い出作りのためです。富士のふもと河口湖で生まれ育ったわたしですが、これまで富士山には一度も登ったことがありませんでした。
きっかけは、顧問先の社長から、3人のお子様がそれぞれ10歳になった年に富士山に登っていると聞いたことです。
河口湖口5合目を午後4時に出発して、8合目の山小屋に着いたのが夜8時半。夕飯と仮眠を取り午前1時に登頂アタック隊の出発です。途中、山頂でのご来光を目指す登山客の大渋滞でずいぶん時間がかかり、登頂は日の出直前の4時40分でした。
何度登ってもご来光を拝むことができない人もいるなかで、わたしどもは幸運にも当日は天候に恵まれました。日ごろの行ないは大事なものです。眼下に見える山中湖の向こう側にご来光の陽が差し始めると、かつて味わったことのない感動で涙がこみ上げてきました。合掌。
ちなみに、当日は皇太子様も富士山初登頂されたと後になって知りましたが、それもいい記念となりました。
ところで、富士山というと数年前に世界自然遺産に落選したと聞いたときは、河口湖出身のわたしとしては少し残念な思いになりました。そのときの落選理由は環境問題です。しかし今回行ってみるとゴミ問題については登山客のマナーも良く、ひどくは感じませんでした。むかしは富士スバルライン沿いにも随分のゴミが散乱していたものです。トイレ問題についてはよく分かりません。
今では自然遺産がダメなら今度は世界文化遺産への登録をと推進している人たちがいますが、わたしはこれには少し首を傾げてしまいます。というのは、売店や山小屋の人たちの態度の悪さです。アルバイトの学生たちは山の好きな素朴な若者が多く印象は悪くないのですが、地元業者の人たちの態度が良くありません。驚くべき悪さです。他の登山者たちからも、そんな声が聞こえてきました。
何十年もむかし、まだ成熟していない観光地で見かけた態度の良くないオヤジたちが、今でも富士山に行くと見ることができるのです。富士山を世界遺産にするより、かれらを天然記念物にすべきです。
他山の石になるとも思えませんが、事業家のみなさまもそんな天然記念物を後学のために一度見物に行ってみてはいかがでしょうか。良い反面教師になるかもしれません。
とにかく富士山という場所は自由に商売が出来ないところですから、権益を持った既存の業者の独占状態です。したがって登山客は、かれらにどんな態度を取られても利用するしかありません。
世界遺産に登録されたら登山客は何倍にも増えてしまいます。それは地元観光業者にとっては良いことですが、悪い評判が世界に広がってしまうのは由々しき問題です。まずは登山客のマナーよりも地元業者のマナー改善が先決だろうと強く感じた富士登山でした。
むかしから富士山は「一度も登らぬバカ、二度登るバカ」と言われています。一度登ったわたしはバカを脱出しました。さて、みなさまはどちらでしょうか。