わたしが税理士を開業したのは平成元年のことですから、今年で20年目を迎えたことになります。その年の暮れには日経平均が38,000円を超えて、世の中は浮かれに浮かれまくっていた時代でした。
もっともその頃のわたしはバブルとはほど遠く、本当にお金がないまま開業したものですから、恥ずかしながら事務所さえ借りることができませんでした。新婚生活を送っていた国分寺市内の木造2DKアパートの片隅に、大家さんのお許しをいただいてパソコンとコピー機を持ち込んでの開業でした。あったのは夢とやる気だけでした。
それでもさすがにお客様や名刺交換していただいた方から「こんど事務所に伺います」なんていわれると本当に困ってしまいました。生活臭漂うアパートに来てもらうわけにはいかなかったからです。とにかく最初の目標は、一日でも早く事務所を外に借りることでした。
それからどうにか半年後には国立市内に事務所を借りられて、これでやっと事務所に人を呼ぶことができると喜んだものです。もちろん立派な事務所なんかではなく、スチールデスク2台とスチール棚、そして小さな打ち合わせ用のガラステーブルを置いた程度の質素な事務所でした。
お給料ではなくて、お客様から直接いただいた顧問料で、少しずつですがモノをそろえ格好がついてくるのは楽しいだけでなく小さな自信にもなりました。家内と二人だけの事務所でしたが、なんだか達成感があり、部屋の隅からスチールの机や棚を眺めては悦に入っていたものです。
いまは40数坪の事務所で10数人のスタッフと共に仕事をさせていただいておりますが、思い起こせば5〜6坪の事務所で家内に手伝ってもらいながら夜中まで悪戦苦闘してやっていた当時のほうが充実していたような気がします。
当時のわたしを、亡き父は「目を輝かせて夢と希望に満ちて見えた」と言っていました。若いということはいいもので、お金なんてなくても夢さえあれば辛くもなんともありません。
そんなわたしも、最近では初心を忘れて、少しいい気になって仕事をしているな、と反省することもあります。開業から20年を重ねたとはいえ、わたしもまだ40歳代です。50歳代で新規開業する人もいるのですから、もう一度初心に返り、かつて「目を輝かせて夢と希望に満ちて見えた」頃のように夢を描きなおしてやってみようと強く思っています。
1〜2年して、みなさまから「変わったな」とか「進化したな」と必ず言っていただけるような事務所作りに取り組みたいと、いまは本気で思っているところです。そして、みなさまからの叱咤激励もお待ちしております。今後の大石会計にご期待ください。