「儲かって税金を払うぐらいなら、経費をどんどん使います」……このように言われる中小企業の経営者は案外多いものです。本当に税金を払いたくないのですね。きっと、税金を払うということはお金をドブにでも捨てる感覚なのでしょう。

　しかし、よく考えてみてください。経営者のもっとも大切な仕事は会社の成長拡大を続けることですから、会社が生んだ利益をすべて吐き出してしまうようでは経営者として大いに問題ありといえます。そもそも、いつまでも好調が続くという前提で利益を使い切ろうとするのでしょうが、企業経営はいつ赤字となり苦境に陥らないとも限りません。そんな中で、利益を全部使い切りたいという経営者の考え方ではこの先いったいどうなることやら会社の行く末が心配になります。企業経営の望ましい姿は、少ない経費で可能な限りの利益を上げられることなのですから。

　会社が生んだ利益は翌期以降の収益を生むための投資に使ったり、もしもの準備のために確保しておかなくてはなりません。つまり、当期の利益は翌期以降の利益を生むための費用でもあります。税金を400万円払わないために1000万円のお金を使ってしまうなんてピント外れもいいとこです。何がなんでも税金を払いたくないからといって、意味もなく社員に過大配分したり、要りもしないものを大量に買い込んだりしているようでは経営者として失格です。そもそも税金を払わずに会社が成長拡大することはありません。なぜなら基本的に資金の内部留保は納税せずにはできないため、納税をしないまま会社が大きくなろうとすると借金も比例して大きくなるからです。

　みなさまの会社は営利を目的にしておりますから利益が上がって困ることなどありません。みなさまは利益を生むために創業されたのではありませんか。税金の払いすぎで潰れる会社はありませんが、要らぬ出費をして潰れる会社はたくさんあるのです。会社のためにもならない要らぬ出費に頭をひねる時間があるのでしたら、もっと収益の上がる活動に頭を使って欲しいものです。もちろん、将来の収益を生むために行なう正当な投資活動が経費になるのでしたらそれは望ましいことですが。

　わたしは税金を多く払えと声を大にして言う変わった税理士かもしれません。もちろん、税理士ですから税金を安くする方法などいくつも提案できますが、その多くは本当に会社のためになるとは思えないのです。企業経営という観点からは税金を払い続ける会社の方が良いに決まっています。まともな経営感覚をお持ちの税理士でしたら、これに反論される方はいないと思います。