めったに起こることのないリスクを、やらない理由やできない理由に結びつけてしまう経営者に出会うことがよくあります。しかし、企業にとってのっぴきならぬ事態を招くような大きなリスクなど、一体どれだけあるというのでしょうか。
それでも心配性の経営者は、ほんの小さな危険に対してさえとても大きな危険と受け止め、あれこれ思い悩んだり、躊躇したりするものです。ところが、そのほとんどは気を病むほどの事態に繋がることはなく、結果としては取り越し苦労に終わります。これまで胃が痛くなるほど心配したことのうち、どれだけのことが現実に起こったかを考えてみればお分かりでしょう。
川の向こう岸にある目的地に行くために、ボートを使うのか、イカダを作るのか、または上流まで歩くのかと方法論ばかりを考える経営者もいます。考えただけで向こう岸に渡れるのなら、いつまでも考え続けるのもいいでしょう。しかし、緩い流れも一晩で激流になってしまうかもしれません。後になってから、あのとき行動していればと地団駄を踏んでも遅いのです。そんな時はつべこべ言わずに川に飛び込んでしまうが一番なのです。経営にとっては、どのようにやるかよりも、いつやるかということの方が重要であり、多くの場合はすぐにやるべきなのです。
当たり前ですが、企業はお客様あってのものです。そのお客様の変わりゆく要求に応えていくことが企業の目指すところであり、わが社の都合などお客様にとっては何の関係も関心もありません。あれこれできない理由で、わが社の状況を論評することが経営者の仕事ではなく、目標に向けてやるための理由をつけて社員を導くことが経営者の大事な仕事なのです。いろいろ考えて結局『なにもしない』という経営判断が一番いけません。経営者には変化のために常に『なにかをする』という判断をし続けてもらいたいものです。
あまり考え込まずに、すぐに川に飛び込み、先のことはそれから考える。高収益企業の経営者はこのタイプの人が多いのです。つまり、ものごとにはタイミングが必要であり、たとえ考え抜かれた素晴らしい判断であっても、タイミングのずれた経営判断などではなんの役にもたたないのです。