いつ売れるとも知れない商品を、売れたら儲けものとばかりに店頭に並べているお店は、資金繰りの悪い会社の典型です。長期間にわたり店先に並んでいる商品は、そこにお金を積み上げておくのと一緒なのです。なによりも、店ざらし商品はお店の空気を悪くしてしまいます。
商売というのは、資金を回転させないことには利益があがらないことになっていますから、寝かせておくだけでは何も生まれるものはありません。1回あたりの利益は少なくても回転数が多ければ結果として儲けは多くなるのです。
たとえば、原価100円のものを130円で売るのに1ヶ月かかるとしましょう。それをもし、売値を120円にして1ヶ月間に2回売ることができるならば、その方が利益は多くなりますね。そして、この商品が長期間売れ残っている商品だったとしたら90円に値引いてでも早期処分した方がいいでしょう。
中古車屋をイメージしてください。仕入値100万円の中古車を売値130万円で店頭に並べてもなかなか売れない場合には、状況によっては原価を割ってでも一度は売却して現金に換えるのです。90万円で叩き売っても、その売却代金で売りやすい90万円の中古車を仕入れ110万円で売る。これを2回繰り返すと当初の予定していた30万円の粗利益を稼ぐことができます。
もちろん、赤字を出してまで値引き販売したくないという気持ちも分からなくはありませんが、もったいないからといっていつまでも店頭に並べておくことの方が、さらにもったいないことなのです。売れない商品を仕入れてしまったこと自体が既に失敗なのですから、その失敗は早く解消しなくてはいけません。その解消方法は、頑張って予定価格で売るように努力することではなくて、売れる金額まで値引いてでも売ってしまって、いったんは現金に換えたうえで早めに売りやすい物を店頭に並べるべきなのです。
他にも、商品や材料を安い出物があったからといって何か月分もまとめ買いすることや、家賃を払うのがもったいないからといって安易に自社ビルを建てること、これらも思った以上に資金繰りを悪化させてしまいます。節約のためにしたことが、かえって自分の首を絞めることにもなりかねないのです。
商売は単純に利益だけで行えるのではなく、常にキャッシュフローを意識しなくてはいけません。極端に言えば、たとえ赤字であってもキャッシュフローがマイナスにならない限り会社は存続できるのです。逆に利益を計上していても、在庫や不動産に資金を固定させてしまうと、資金繰りに詰まることもありますから、これには注意が必要です。