お客様からいただくクレームの向こう側には、こちらの耳に届かないだけでその何倍ものストレスがあるはずです。大きな失敗や事故を未然に防ぐためには、お客様が感じるそんな小さなストレスをも察して対応していかなくてはなりません。
1件の重大災害の裏には29件の軽災害があり、その裏には300件のヒヤッとする体験があると言われます。これが『ハインリッヒの法則』、別名『1:29:300の法則』です。アメリカのハーバート.W.ハインリッヒが5,000件余の同種の労働災害を調べた結果導いた法則で、ビジネスの世界でも多くの場面に当てはまる法則として活用されています。
例えば、これをクレームに当てはめると、1件の大失敗の裏には、お客様からのクレームで明らかになった29件の失敗があり、さらにその裏には300件の社員が「しまった」と思いながらもクレームが来ないため見過ごされている失敗があるというものです。
社内で、社員が「まぁいいか」と思っている程度の小さなことを放置しておくと、そのうちお客様との信頼関係にまで影響する大きな失敗となって表われることがあります。大事故ばかりを防ごうとするのではなく、まずはじめにクレームにまで至らない小さな「ヒヤリ」を防ぐことが大切です。その小さな「ヒヤリ」を放っておいて大きな事故だけを合理的に防ぐことなど出来ません。
しかし、結果としていただいてしまったお客様からのクレームには、それがさらに大きな失敗や事故に発展しないためにも、最優先で対応しなくてはいけません。なぜなら、あなたの会社のサービスに対する期待を裏切られたと感じたお客様の誰もがクレームを言ってくるのではないからです。むしろ、クレームを言ってくれる人はまだありがたいのです。黙って二度と来店されないお客様が怖いのです。いま目の前で対応しているクレームの向こうには、声こそ出さないが不満を持っている10倍のお客様がいることを忘れてはいけません。
クレームこそビジネスチャンスとは言いますが、「よしやった、クレームが来た!」なんて前向きには思えませんし、クレームの電話には誰だって出たくない気持ちになります。しかしクレーム対応に当たった者の、その場を早く収束したいだとか早く電話を切りたいといった空気を、お客様は敏感に感じ取ってしまいます。中途半端なクレーム対応は命取りになりますが、誠意を持った本気のクレーム対応はビジネスチャンスに発展することも確かにあるのです。
クレーム対応4原則
(1)すべての業務に優先して行う
(2)いかなる言い訳も絶対しない
(3)時間と費用を絶対に惜しまない
(4)クレーム自体の責任は追及しないが、クレーム不報告の責任は厳重追及する