日頃からわたしは「会社として出来るだけ大きな目標を掲げてください」と経営者に申し上げています。それに対して、ある社長から「経営目標をたてて社員に負担を強いたら、目標達成時には社員に対して見返りの約束をしなくてはいけないのでしょうか」と質問されました。
これは中小企業のオーナー社長にはありがちな発想です。オーナー社長はオーナーであるが故に、社員の尻を叩くことに臆病になってしまうようです。会社の利益は社長の利益であって、社長だけが儲けていると思われるのではないかと、余計なことを考えてしまうオーナー社長は案外多いのです。
細かく経費の節約を要求するとセコイと思われはしないか、強力に営業推進すると自分だけが儲けているように思われるのではないか……。考え出したらキリがありませんが、これが雇われ社長でしたら誰もこんな心配はしません。
しかし、それは誤解も甚だしいのです。あなたがお勤めしていた時に「どうせこれをやったら社長が儲かるだけだろう」なんて思いで仕事をしたことが一度でもありましたか。そんな思いでやっていたのなら今のあなたの立場はなかったのではないでしょうか。
仕事ですから、営業することも節約することも当たり前のことなのです。会社として高い水準のサービスを提供して収益を上げることに、またはコストの削減を図ることに対してなんの遠慮がいるのでしょうか。大企業の社員には「会社の目標達成に協力した暁には何か貰えますか」などと上司に言うおバカさんは存在しないことを考えればお分かりになるでしょう。
出来るのなら、目標達成に対して功ある者には禄を与えたいものですが、はじめから見返りを約束する必要はないのです。功がなかった者にはペナルティを与えるなどという逆の約束もまた出来ないのですから。
そもそも仕事とは、単にお金を得る作業ではありません。仕事は、役務を通して社会の役に立つとともに、それを通じて自らの人格を磨くことが出来る場でもあるのです。入社から何年かした社員の、ヒトとしても成長している姿を見たら分かるでしょう。そんな仕事を一所懸命やり抜くことに何の躊躇がいると言うのでしょうか。