中小企業経営者の中には、ご自分の会社を今のまま現状維持していけたらと考えている方が多く見受けられます。経営者がそのように思ったら会社が成長拡大することはありません。会社の規模は経営者の資質によるところが大きいものですから、この点においてはご自分を過小評価されない方がいいと思います。
わたしは、関わりを持たせてもらったどの会社にも、出来ることなら大きくなってもらいたいと願っております。もちろん、経営者による適正規模を超えてしまうとコントロール不能になりますから、ただデカければいいとは言いませんが、経営者もご自身に磨きをかけながら会社を拡大させるのが基本だとわたしは考えます。
とは言っても、あなたの会社が家族経営の家内工業の場合は現状維持もありなのかもしれません。しかし社員をひとりでも雇っているのでしたら、会社を成長させることは経営者の義務と考えてもらいたいものです。会社は上昇し続ける人件費と経費を賄ってなお、存続するためには成長していくしかないのですから。
社員は一生を通じての生活の向上と安定を望んでいる筈です。つまり、勤めた会社の将来がその社員の将来を大きく左右するのですから、会社の将来性は社員にとって最大の関心事であるのです。
しかし社員にとって、どこの会社で働くかは運のようなものです。はじめは誰でも前向きな気持ちで入社してきます。面接の時に会った社長も尊敬できそうだし、待遇もマズマズだと思って入社してきます。『こんな会社…』なんて思って入ってくる社員はひとりもいません。ところが、次第に将来の希望が持てなくなるのはどうしてなのでしょうか。
社員も会社や自分の将来の夢を語りたいと思っているのです。家族や彼女に自分の会社の自慢話をしたいと思っているのです。そんな社員の思いを叶えるためにも、進むべき方向性だけは明確にするのが経営者の最低限の責務ではないでしょうか。
その経営者の方向性に対する意思表示が経営計画であり、その経営計画は社員に対する約束でもあります。つまり、経営計画の中味は社長の決意であるとともに、社員にとっては自分の将来でもあるのです。社長が経営計画で社員に対して将来のイメージを示すことで、社員の行動基準と方向性が明らかになるのです。それがなくては、社員に愛社精神も帰属意識も求めることは出来ないのではないでしょうか。